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七人の帰還

 7人の乗組員全員が久しぶりに顔を合わせた。通常は、2人1組で当直につき、他のメンバーはコールドスリープに入っている。そのため、全員が起きてくることは、定期会議の時以外はない。
「では、定期会議を始めます。船長、よろしいですね」
 初老の男がいった。つい先ほどまで、何かを修理していたのか手にはハンマーを持っている。足元にそれを置き、隣りに座っている同年輩の男にいった。 
海洋生物捕獲用ツールを持った、その男はニッコリ微笑みながらうなずいた。実に魅力的な笑顔だ。
「では、今回の動議を出したのは、だれでしたかな」
 初老の男が司会をする。
「私だ」
 でっぷりと太った男がいった。坊主頭で太鼓腹。とても宇宙飛行士には見えない。しかし、彼は優秀な惑星研究者だ。
「例の星系の第3惑星のことだ。もうそろそろ私たちが帰還してもいいかと思うのだが」
「賛成です。わたしもあの惑星は定期的に観察してました。あの種族をこれ以上放置しておけば、滅亡します」
 メンバーでただ一人の女性がいった。
「俺は反対だ」
 壮年の男がいった。筋骨たくましい体形をしており、精悍な容貌だ。船の兵器担当者だ。
「連中はもう手遅れだ。連中に手を取られるのなら、他の星系に行くべきだ」
「お二人はどうかな」
 同じような年輩の老人が二人座っている。二人ともベテラン宇宙飛行士だ。
「実はワシら二人だけで、あの惑星にこっそり降りた」
「抜け駆けはいけませんわ」女性がいった。
 二人は年長者だから、他のメンバーはそれなりに敬意を払っている。彼女だけが遠慮しないで二人にものをいう。
「すまんすまん。今度はおまえも連れて行こうぞ」
「で、お二人のご意見は」
「帰還に賛成じゃ」
「どうでしょう。船長」
 笑顔の男の顔が一瞬真顔になった。目はまだ笑っている。
「私は、みなさんご存知の通り、1年に1度この時期に3日間だけ、あの星に降りている。確かに末期的な症状だが、見込みはあると判断するな」
「では、帰還ということで」
「ミスター・ビシャ。船長はああいっているが」
「船長が判断されたのなら俺も依存はない」
「よし、戻ろう。針路変更だ」
 太陽風を一杯に受けた帆の角度が変った。

「おはよう。夢見た?」
「うん見た見た」
「昨日は元日だったやろ。今日は二日や。昨日から今日にかけて見る夢が初夢やで。で、どんな初夢やった」
「うん、4人のおっちゃんと2人のおじいちゃん、1人のねえちゃんが昔の船に乗ってやって来る夢やったわ」
「えらいゲンがええ夢みたな」
「もうすぐ十日戎やけど、今年は連れてってくれるやろ。おとうちゃん」
「トラコ連れて行くとなんでも買うてゆうからな」
「ゆわへんから連れてってえな。アメ買うてもろかかて、口の中でレロレロしとくさかい」

 C国が初の大統領選挙。一党独裁をしいていたK党と、民主化を主張していた勢力が連立しました。C国初代大統領にはノーベル平和賞受賞者のR氏が就任。NK国で民衆蜂起。独裁者のK親子は追放。拉致被害者は全員無事帰国。全世界は統一のために南のK国を支援。
 A合衆国、R連邦が核兵器全廃条約に調印。他の核保有国も同調。民主化したC国が牽引役となり、世界経済は順調に上向き。I国とPが恒久的な和平条約を締結。中東に真の平和が訪れました。
 全世界的に軍備が大幅に削減。軍事に使っていた膨大な予算は福利に回されました。餓死する人が劇的に減少。人類はかって経験したことのない高福祉社会に入った。

「間に合ったな」
   
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