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とつぜんリストラ風雪記 17

とつぜんリストラ風雪記16

第17回 中高年のための再就職マニュアル実戦編その3

 リストラされる中高年は多い。先祖伝来の広大な田畑を持っていたり、ひい祖父さんの代から大金持ちで、趣味でサラリーマンをやっている人ならいざ知らず、ほとんどのリストラ中高年は、職を失うと同時に収入が途絶える。そのまま何もしなければ、生活保護に頼るか、でなければホームレス、最悪、餓死だ。
 だから、ハローワーク、人材紹介会社、新聞広告、求人チラシなどの求人情報には、多くの人が応募する。ライバルが大変に多いわけ。
 こういう状況で、中高年が再就職を果たすには、それなりの戦略を立てることが必要。前回までは、公開されている案件に、様々なアプローチで応募する方法を書いたが、今回は全く公開されていない案件に応募した時のことを記す。また、中高年の場合、一番ネックとなるのは年齢。特に50を超すと状況は絶望的となる。本当は、年齢は選考の項目に入れてはいけないことになっている。ところが、そんな取り決めは無視してもなんの罰則もない。罰則のない取り決めなんぞは無意味。決め事を守らない企業の求人案件はハローワークで取り扱わないことにすればいいと思う。

 ともかく履歴書、職務経歴書に手紙を添えて、これはと思う企業に送ろう。送るだけならどんな企業に送ってもいい。トヨタであろうがGMであろうが任天堂であろうが松下電器であろうが、求職の書類を送ってもいいわけだ。ただ、こんな一流企業に「私を雇ってください」と売り込んでも、まず無理だろう。どうせ手間と郵便代を使って送るのだから、少しでも可能性のある企業に送ろう。
 ともかく、売り込み先の企業をピックアップしてリストを作る。これはどんな方法でもかまわない。会社四季報などの印刷物、インターネット、新聞の広告など。ともかく企業の社名さえ判れば、ホームページを見ればだいたいのことは判る。できるだけたくさんの企業に送ろう。失業者だから時間だけはあるだろう。
 小生の場合、散歩して、よく前を通る会社や、電車の窓から見かけた会社、など、目について、これはと思う会社には、どんどん書類を送っていった。このうち半分ぐらいは無視された。さらに半分は、「弊社では資材部員の増員は考えていません」と、返送してきた。ごく一部は、ていねいな手紙が添えられていた。このうちの1社だけ面接までしてくれた。
 その会社は小生宅のすぐ近く。電子計測器のメーカーで、散歩の時によく前を通る。近くの会社だから以前から知っていた。電子関係の会社だから、電子部品を扱う資材部はあるに違いないと、書類を送ったら、電話が架ってきた。面接に来て下さいとのこと。もちろんOKして、翌日に面接に行った。
 資材部には欠員がないので、今は中途採用するつもりはないが、総務にできれば新しい人が一人入れたいとのこと。
「総務は経験ありません」というと、面接をしてくれた人(総務部長)が、「私も、元々は現場の人間でした。だれでも初体験はあります」といってくれた。総務部長は私を気に入ってくれた様子だった。私自身も、経験はないが総務もやってみようという気になった。
 以上のように、この面接はかなり良い手ごたえで終わった。仕事は全く専門外だが、この会社、家から非常に近いのが魅力。歩いて15分。自転車なら5分もかからない。
 結論として、この件はだめだった。総務部長は推してくれたが、社長が最終的に、今回は見送るとの判断をしたとか。
 それから、数ヵ月後、この会社の総務部長から電話があった。資材部でアルバイトが必要になった。社長が小生のことを覚えていて、総務部長に小生に声をかけるように指示したとのこと。その時は、MK産業という会社に勤めていた。そのMK産業は3ヶ月で退職することになるのだから、アルバイトであっても、その会社N電子のお世話になっておればよかったかもしれない。
 総務部長は気に入ってくれていた。社長も小生のことを気にかけてくれていたとのこと。アルバイトでがんばっておれば正社員に登用されていた可能性がある。と、なると今の会社に就職していないことになる。
 小生、今の会社は気に入っているし、正社員で、時間外手当もちゃんと出るし、62歳定年で、65歳まで希望すれば嘱託で残れる。中高年の再就職先としては、かなり条件が良い会社である。
 人生、万事塞翁が馬。なにが吉でなにが凶かわからない。ともあれ、こういうことがあるので、少しでも可能性があれば行動を起すことが肝要である。

 冒頭に書いたように、中高年の再就職活動の最大のネックは年齢である。50歳を超えてもOKとういう案件は絶望的に少ない。これに恐れて腰を引いていては中高年の再就職活動はできない。
 本当は年齢は選考の項目にいれてはいけないことになっている。ハローワークの壁にポスターが貼ってるのを見たことがあるだろう。ところが現実は、こんな取り決め、あってなきがごとく。断ってきても、年齢が高いから、あなたは不採用、と正直にいう企業などはない。
 では、どうするか、そんなもの気にせずに、どんどん応募すればいい。ただし、真正面から履歴書と職務経歴書を送付するだけでは面接はしてくれない。そこで小生は次のような手紙を同封した。

拝啓
 貴社におかれましては、ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。
 さて、私は雫石鉄也と申す、現在、求職活動中の者です。昨年11月まで、27年間、K電気に在籍して、資材購買業務を担当しておりました。K電気はM電機の協力会社としては関西では最大手で、光通信、衛星通信、防災無線、ITVなどを、設計から組立、据付まで一貫生産しておりました。私は、主に電子部品の購買仕入れ、在庫管理、その他、生産管理、外注管理など、資材業務一筋で27年間を過ごしきました。ところが、業績不振により、大幅なリストラが敢行され、私も早期退職制度に応募してK電気を退職したしだいです。
 ハローワークで求人検索をしておりましたら、貴社の案件が目に留まりました。電子部品の購買仕入れ担当者をお求めとのこと。
 貴社のような電機関係の会社での資材業務。私がK電気で27年間やってきた仕事です。早速、応募しようと思ったのですが、貴社の求人票を見て考え込んでしまいました。年齢が45歳以下。私はこの年齢を超えております。
 このようなことは釈迦に説法とは存じますが、求人募集に際して、年齢を選考の項目に入れてはいけないことになっております。貴社の人事採用ご担当者様も、そのようなことは重々承知の上で、様々なご事情で、ばんやむを得ず、あのような記述をなされたものと、推察申し上げるしだいです。
 まさか、貴社のようなこれから伸びていこうとする企業が、年齢で人の採用不採用を決するというような、不合理なことをするとは思われず、年齢という一点だけは外れてはおりますが、あえて私が応募させていただいたしだいです。
 確かに私の年齢は、貴社の募集基準を少々超えてはおりますが、この11月まで現役でしたし、当時、取り引きしていた各営業担当の方々とも、個人的な友人としてのつながりは、K電気を退職した現在も保っております。この人脈は、幸いにも私が貴社の資材担当となった暁には、貴社のお役に立つことでしょう。
 どうか、面接の機会を下さるようお願い申し上げます。
敬具


 まあ、この手紙を読んだ(それだけでも幸運)人事担当者のほとんどは、何を皮肉をゆうとると、無視するだろう。それでも、この手紙が効いたのかどうか知らないが、1社だけ面接に呼んでくれた。この会社は2次面接まで行ったが、通勤時間が2時間かかる上に、月に100時間の残業で、しかも時間外手当が出ない。こちらから断った。
 このように、まったくとっかかりのない企業でも、希望を持って活動すれば、なんらかの結果がでる。
 なお、手紙に書いた、K電気時代の取引先との営業担当者との、個人的なつながりは事実で、その後、就職した2社で、この人脈を活用した。こういうことも、資材購買担当者の財産である。 


 

 
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