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10月15日(水) 「天才画家の肖像・謎の絵師東洲斎写楽」を観た

 
 NHKハイビジョンで、HV特集「天才画家の肖像・謎の絵師東洲斎写楽」を観た。このシリーズ、なかなか見応えのある美術番組で、今まで、葛飾北斎、喜多川歌麿、俵屋宗達などの画家たちを取り上げてきたが、今回みた写楽が一番面白かった。
 写楽は謎の画家である。寛政年間に突然デビュー。わずか1年足らずで忽然と姿を消した画家である。この写楽の正体は、邪馬台国はどこか、本能寺の変の真相、などとともに日本史上で大変に興味を引かれるものの一つ。
 写楽の正体については様々な説がある。北斎説、歌麿説、能役者説。番組では、能役者説に焦点を当てていた。
 写楽の絵は、ほとんどが役者絵、それも歌舞伎役者の顔を、大写しのクローズアップで描いた、大首絵といわれるもの。この歌舞伎役者の絵、現代でいえばブロマイドに当たるもの。従来は役者の美しさを際立たせた絵であった。ところが写楽はうんとデフォルメして、役者の個性をそのまま描いた。これが異様な迫力で、写楽の評価が高い要因となっている。ところが線の使い方など、練達の絵師が使わないような線の使い方をしている。デッサンも大きく狂っている。それが迫力を生む大きな効果となっている。このような技法は絵の素人だからこうなったのか、プロの絵師があえて演出効果を狙ってこういう描き方をしたのか、どちらをとるかで写楽の正体に大きく関わる。
 小生はこの番組を観て、北斎、歌麿といったプロ絵師ではないとの印象を強く持った。では、写楽の正体は誰だ。阿波藩の能役者斎藤十郎兵衛説がかなりの精度で正しいのではないか。
 まず、女性の描き方。歌舞伎の女形を美しく描かない。大きくデフォルメして、滑稽にすら見える描き方をしている。顔のシワまで描いている。プロの絵師ならば、美しさが売り物の女形を、こんな描き方をするはずがない。
 番組で、同時代の歌川豊国と比べていた。圧倒的に写楽の勝ち。迫力が違う。豊国がスチール写真だとすれば、写楽はビデオ。豊国が静止画で写楽が動画。
写楽は大首絵ばかりではなく全身像も書いている。豊国と写楽の絵を比べると、豊国は骨格が直線で、スッと役者が自然に立っている。あたかもスタジオで写真家がモデルを撮影したようだ。写楽の役者は骨格が曲がっている。身体の線が不自然な曲線で構成されている。それが観る者に動きを感じさせているわけ。スタジオではなく野外でモデルを自由に動いてもらって、ハンディなビデオカメラで撮影したようだ。
 こういう役者の描き方は、絵師には発想が浮かばない。自分自身が演技をしている、能役者だからこそ描けるのではないだろうか。
 その他、番組では写楽斎藤十郎兵衛説の根拠として次の点を上げていた。
 
 江戸時代の考証家斎藤月岑が写楽の本名は阿波藩の能役者斉藤十郎兵衛であると記録している。
 斎藤十郎兵衛の実在は確認されている。
 写楽の描く役者の顔が能面と表現の共通点がある。
 能役者は武士階級である。武士が町人向けの芸人である歌舞伎役者と交際があればまずい。だから覆面作家でいた。
 斎藤十郎兵衛の雇用主である阿波藩主が参勤交代で国元に帰った。その間、お抱え役者の斎藤はヒマ。この斎藤のヒマな期間と写楽の活躍時期が一致する。
 など、しかし、未だに決定的な証拠はでてきていない。
 
 

 
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