風に吹かれすぎて

今日はどんな風が吹いているのでしょうか

初めてのアメリカ3

2016年06月07日 | 旅行
もとより貧乏旅行ですから、移動手段は乗り放題のバスです。
確か30日間乗り放題のパスというのが海外からの旅行者用に売っていました。
期間内なら。どこからどこまで行こうが完全にフリーパスです。
グレイハウンド・バスです。
いくらかは忘れましたが、貧乏なぼくでさえ安いなと思ったくらいの値段でした。

とてつもなく広大なアメリカ大陸をバスで移動するというのは、なんと言いますか、低所得者層の手段ではあります。
言わずと知れた車社会のアメリカですから、ほとんどの人は車を持っているわけですし、
急ぐ人用には飛行機なり鉄道なりも国土を網羅しています。
というか、アメリカの広大さというのはちょっと体験した人でないとなかなか感覚的に理解が難しいかもしれません。
町から町に移動するのに平気で数時間を要します。
強いてバスを利用するという人は、まぁだから、そういう人たちなわけです。

都市から都市へ移動するのには夜行便を利用して、宿代を浮かすというのがぼくの基本戦略でした。
ぼくは当然のごとく貧乏小僧でしたから、おそらく貧乏であろう人たちと同じバス内で数時間か数十時間かを
過ごすのは少しも不快なことはありませんでした。
それよりも、パック旅行では得ることのできない素のアメリカというものを感じられたような気はしています。

バスは町ごとにバスディーポと呼ばれる停留所に止まって行きます。
たいてい、そこにはファストフードの店が24時間体制でオープンしています。
マクドナルドもありましたが、大方バーガーキングでした。
よって、バスの移動中はバーガーキングのハンバーガーとポテトばかりを食う羽目になります。
若かったので、ハンバーガーを食べることに別段抵抗はなかったので、まぁ、どうってことはなかったです。
ただ、気が付いたのですが、ハンバーガーばかり食べてると腋臭がし始めます。
自分でわかります。
なるほどなぁ、と思いました。

どこからどこへ移動中かはすっかり忘れてしまいましたが、深夜にどこかのバスディーポに停車しました。
例のごとく、みんな降車してトイレに行ったりタバコを吸ったりバーガーキングに行ったりします。
ぼくもタバコをたらふく吸って、バーガーキングでポテトのチーズがけだか何だかを買って、車に乗り込みました。
隣の席には中年の黒人男性が座っていました。
それより数時間前にどこかの停留所から乗り込んできていました。
挨拶もするわけでもなく、不機嫌そうにぼくのとなりにどさりと座りました。
ぼくも余計なことは言わず、何時間か隣同士でバスに揺られていたわけです。

その彼が、休憩を終え、バスに乗り込んだぼくが手にしていたポテトをちらっと見ました。
そして憮然とした顔をして前を見据えています。
なるほどなぁ、と思いました。

意を決して、食べるか、と聞きました。
黙って頷いたので、そのまま手渡しました。
その食べ方が、いかにも何時間も食べてなさそうな食べ方でした。
ああよかったなと思い、またこれはすぐ寝たふりをしなければいけないと思って、目をつむりました。

そうしたら、しばらくバスに乗りっぱなしで疲れていたのか本当に眠っていました。
気が付いて目覚めた時には、隣の席に黒人男性の姿はありませんでした。