Photo by Chishima, J.
(サケの卵を摘み取ったユリカモメ 2015年10月 北海道十勝川中流域)
(FM JAGAの番組 KACHITTO(月-木 7:00~9:00)のコーナー「十勝の自然」DJ高木公平さん 2015年10月26日放送)
毎秋、遡上するサケを追って、河口から50km近く離れた幕別町の十勝川千代田新水路にも多くのカモメ類が飛来します。多くは一年を通じて漁港や海岸で見られるオオセグロカモメですが、この時期には小型のユリカモメも少なくありません。カムチャツカ半島などで繁殖して本州以南で冬を越す、ハトとカラスの中間くらいの大きさのカモメで、北海道を春と秋、渡りの途中に通過します。赤やオレンジ色の細い嘴と足がよく目立ちます。
新水路で観察しているとユリカモメは、中洲付近の浅瀬で死んだサケの肉や内蔵を食べるオオセグロカモメとは異なる餌の取り方をしているのに気付きます。何羽もが川の上をひらひらと舞いながら水中を伺い、ある一点から水面に向かって勢い良く飛び込みます。飛沫が上がり、力強く伸ばした翼や尾羽以外の体は水面下へ消えます。それも束の間。わずか数秒で再び豪快な飛沫を伴って飛び立った姿は、餌を捕まえたようには見えません。しかし、写真に撮って検証すると、嘴には小さなオレンジ色の球がくわえられています。サケの卵、イクラです。
サケの死体は、ユリカモメの細い嘴には不向きなのでしょうか。あるいは食べたくても大型のオオセグロカモメに力で劣り、追い払われてしまうのかもしれません。身軽な体を活かした機敏な動きで川底に飛び込み、イクラをついばむのが、いつの間にか新水路では一般的となっていました。
タンパク質や脂質に富むイクラは、繁殖地からの長旅を経て、更に南まで渡るユリカモメにとって、この上ないご馳走でしょう。イクラを心待ちにし、その恩恵に預かっているのは人間だけではなかったのです。
(2015年10月25日 千嶋 淳)
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