鳥キチ日記

北海道・十勝で海鳥・海獣を中心に野生生物の調査や執筆、撮影、ガイド等を行っています。

ウトウ(その1) <em>Cerorhinca monocerata </em>1

2011-12-08 23:54:49 | 海鳥写真・チドリ目
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All Photos by Chishima,J.
(以下すべて ウトウ 2011年5月20日 北海道十勝郡浦幌町)


 英名のRhinoceros Auklet(サイのような中型ウミスズメ類)、学名の種小名monocerata(一本角の)ともに、嘴基部にある銀白色の突起に由来するもの。道東では夏鳥で11月下旬まで見られ、3月中旬には戻って来るが、12~2月には見たことがなく、その期間にはいても非常に稀と思われる。消失・出現の季節性は、ウミネコとよく似ている。越冬域は北海道より南がメインなようで、釧路航路があった頃は常磐沖から銚子沖で、厳冬期には多く観察された。黒っぽい鳥というイメージが強いが、胸を上げて羽ばたいている手前の個体からわかるように体下面は白い。飛翔時には下面の白色が思いのほか目立ち、鳥をツートンカラーに見せる。

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 海上に浮いていると体下面の白色は見えず、全身黒色に見える。この写真のように光線条件が良いと一様な黒色ではなく、上面は黒褐色、下面は灰褐色であるのがわかる。いずれもオリーブ色みを帯びるのは、本種の特徴である。浮いている状態で本種と紛らわしいのはエトピリカであろう。エトピリカは本種よりも大きく、全体的な黒色みも強い(炭のような黒)が、若い鳥では胸から脇にかけて灰白色で、条件によっては識別が困難なこともある。


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 半逆光での見え方。順光下より単一な黒色に見える。嘴基部の突起はこの条件でも明瞭。本種は4~5月にかけて、しばしば2羽で海上に見られる。それらの社会的な関係は不明だが、つがいの可能性もあろう。ウミガラス属やウミスズメ属では、繁殖期以外にも2羽で海上にいることがよくあるが、それらの関係もやはり不明。


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 冒頭写真の奥側の個体。嘴先端から下嘴角にかけての勾配は急で、嘴を厚みのある、パフィンぽく見せている。顔や上面の黒みも強く、顔の2本の白線もより顕著。これらが性差や齢差、個体差なのかはわからない。


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 冒頭写真での、手前の個体。嘴先端から下嘴角へかけての傾斜は緩やかで、虹彩は黄白色のもう1羽に比べて明らかに暗色である。光線の関係もあるかもしれないが、顔も灰色みが強いように感じる。本種は北海道で繁殖するウミスズメ類の中では唯一、過去数十年で減少傾向を示していない。その理由は明らかにされていないが、それがわかれば他種の保全に活かせるかもしれない。


(2011年12月8日   千嶋 淳)

*一連の写真は、日本財団の助成による十勝沖海鳥調査での撮影。


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