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鳥キチ日記

北海道・十勝で海鳥・海獣を中心に野生生物の調査や執筆、撮影、ガイドを行っていた千嶋淳(2018年没)の記録

ウトウ(その2) <em>Cerorhinca monocerata </em>2

2011-12-20 23:03:57 | 海鳥写真・チドリ目
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All Photos by Chishima,J.
(以下すべて ウトウ 2011年5月20日 北海道十勝郡浦幌町)


 一連の写真は同日、同海域のものだが、個体は別。本種は、飛翔時には体躯がサツマイモのような体型を示す。この独特の紡錘形は、顔から首にかけて顕著なくびれのある海ガモ類や、全体により細長なウミガラス類、ケイマフリ類などとの識別に役立つ。翼は体のやや後半にあってカモ類よりも細く、先端は尖る。顔の白線や嘴周辺を除くと上面は一様な暗色で、このように下面が見えない条件では全身暗色の鳥に見える。


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 一方、後ろの2羽のように翼を上げて体下面が見える状態では、胸下部から腹にかけての白色部が目立ち、白黒の鳥という印象を受ける。体下面の白は、光線条件が良ければかなりの距離からでも確認でき、逆に本種ではないような印象さえ与えることがある。


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 群れの飛翔。しばしば数~数十羽で密な群れを作って飛ぶ。羽ばたきは速くて力強い。飛翔は直線的。本種の群れにウミガラス類や他のウミスズメ類が混じったり、海ガモ類の群れに本種が混入していることもよくある。


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 上の群れの一部を切り取ったもの。先頭の3羽は若いのか、顔の白色部や嘴基部の角が不明瞭で、全体的に褐色みが強く、体下面の白色部も不明瞭に感じられる。特に下側2羽のような個体は、これだけ単発で飛んでいるのを見ると、識別に迷うかもしれない。ただ、サイズや飛び方、全体的な雰囲気などを総合すればそう難しくはないはず。


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 半逆光での見え方。色や顔周辺の模様などがわからず、順光下より識別は難しい。サツマイモのような紡錘形は、この条件でも有効。


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 光量の乏しい条件での見え方。距離が近いため、嘴基部の突起も顔の白線も見えているが、上面の色はより黒っぽく見え、十分な光のある順光下とは違った雰囲気に見える。また、体下面の白色とのコントラストも乏しく見える。


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 成鳥夏羽と思われる2羽の飛翔。顔の白線は非常に明瞭で、嘴の赤みも強い。顔の白線が見えなければ、エトピリカのようにも見えるかもしれない。サイズや飛び方、上面のパターンなどが似るクロガモは、体型や翼の位置、形態のほかオスであれば嘴基部の黄色い瘤が目立ち、また体下面まで一様な黒色である。メスであれば嘴が黒く、顔に淡色部がある。


(2011年12月20日   千嶋 淳)

*一連の写真は、日本財団の助成による十勝沖海鳥調査での撮影。


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