
All Photos by Chishima,J.
(以下すべて コウミスズメ 2011年2月20日 北海道苫小牧沖)
繁殖期には主に岸から2km以内の沿岸域で採餌する本種だが、非繁殖期には外洋性の傾向が強まる。エトロフウミスズメ同様プランクトン食性で、体サイズが小さい分より小さな餌を食べているようだ。水面採餌と潜水採餌の両方を用いる。餌生物はCalanus属やNeocalanus属のカイアシ類をはじめ、ケンミジンコ類、エビ類幼生等、プランクトン性の微小甲殻類が中心で、ベーリング海ではカイアシ類のバイオマスと分布が、本種の数と営巣分布を調節しているという。

1980年代後半に書かれた総説によれば、ベーリング海北部のセントローレンス島地域と、おそらくプリビロフ諸島周辺でも、カイアシ類の個体数変化に対応して繁殖数は増加している。オホーツク海北部のヤムスキー島では1988年に約600万羽が確認され、世界で最も個体数の多いウミスズメ類とされる。一方で、道東ではかつて春先には北帰中と思われる大群が海岸からも観察されたというが、近年そのような観察例は無い。また、日本における通常分布域外の記録としては九州から、福岡の久留米と博多湾、鹿児島、種子島でのものがあるが、年月日不詳の鹿児島以外は1920年代前半の記録で、近年の渡来は無いようであり、母集団の衰退を反映しているかもしれない。

「ウミスズメ(その2)」の記事でも言及したように、同サイズの鳥でも水面上に白色部が多く現れていると、より大きく見える。全長15cmとウミスズメ類中最小の本種は、たとえ凪の海面であっても浮いている個体はかなり接近してから気付くことが多く、そのような場合には体を沈めた逃避体勢になっており、鳥をより小さく見せる。

水面を走るような逃避体勢を示した後は、たいてい潜水する。このような姿勢では体が沈んでいるため頭部の大きさが強調され、より丸っこい印象を受ける。光線条件が良ければ、虹彩と肩羽の白は多少距離があっても確認可能。嘴は短くて太いAethia属特有のものだが、角度や鳥の姿勢によっては本来より細く見えることがある。
(2012年1月26日 千嶋 淳)