All Photos by Chishima,J.
(以下すべて ウミスズメ 2011年11月13日 北海道十勝郡浦幌町)
海鳥は総じて体サイズや羽色、換羽のタイミング等に個体差が大きいが、そうした実際の差ではなく、距離や光線等による「見え方」によってもまったく違って見える。特に大きさは物差しの無い海上では中距離以上で非常に把握しづらいし、近距離であっても角度や鳥の沈み具合、鳥の周囲の波の立ち方等によって受ける印象がかなり異なってくる。そんな一例を紹介する。上の写真では3羽のウミスズメは、同じ向きで同じような姿勢を取り、著しく浮いたり沈んだりする個体がいないため、大きさはほぼ均一に見える。
この写真は、1枚目の左側の2羽で位置関係は一緒。手前の個体が著しく小さく見える。これは鳥の体がかなり沈んでいて、特に白い部分が水面上にあまり見えていないこと、鳥の手前側に細かい波のピークがあり、鳥体がその向こう側にあること、鳥の頭が後部しか見えておらず、質量感を与える広い顔や厚い嘴が見えていないこと等が複合的に作用した結果と思われる。画像で見る形や色は紛れもない通常のウミスズメであるが、逆光や短時間の観察だと他種や幼鳥・雛と誤認される可能性がある。
2枚目の少し後の画像で、個体の配置は1枚目と同じ。2枚目で小さく見えた最手前の個体は、ここではさほど小さく見えない。鳥の周囲に波が立っておらず、鳥体の水面上に出ている部分が多く、特に脇から下尾筒にかけての白色部が目立っているためであろう。海上、特に晴れた日の青いそれでは、白色部の多い鳥は大きな、逆に暗色部の多い鳥は小さな印象を受けやすい。そのような「錯覚」にも留意する必要がある。
(2011年12月28日 千嶋 淳)
*一連の写真は、日本財団の助成による十勝沖海鳥調査での撮影。