鳥キチ日記

北海道・十勝で海鳥・海獣を中心に野生生物の調査や執筆、撮影、ガイド等を行っています。

ケイマフリ(その1) <em>Cepphus carbo </em>1

2011-12-30 20:54:28 | 海鳥写真・チドリ目
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All Photos by Chishima,J.
(以下すべて ケイマフリ冬羽 2011年3月11日 北海道根室市)


 国内では道東の離島や海岸、知床半島、天売島、下北半島等で繁殖するが、その数は過去数十年で激減している。世界的に見てもオホーツク海と日本海北部、北海道から千島列島だけで繁殖する、極東の固有種といえる。国内でのウミスズメ科鳥類の保全対策は、主にエトピリカとウミガラスに努力が注がれているが、前者は北太平洋全域、後者は北太平洋、北大西洋に広く分布し、日本は分布の辺縁である。国際的な視野に立って日本が保全すべきものは何だろうか?


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 大規模な繁殖地のある歯舞諸島、色丹島から近い根室半島近海で冬に多数観察されること、流氷の辺縁で多く見られること等から長距離の渡りはしない個体が多いと思われるが、南下する個体もおり、冬には道内各地の沿岸で観察され、本州でも稀に記録される。沿岸性が強く、海岸から数kmの範囲で観察されることが多い。
 近距離であれば細長い嘴や和名の語源である赤い脚(アイヌ語の「ケマ・フレ(赤い脚)」に由来するとされる)、英名(Spectacled Guillemot「眼鏡をかけたウミガラス・ウミバト類」)の語源である目の周りの白い縁取り等から他種との識別は容易。ただ、ウミバトの中には雨覆の白斑が不明瞭で、各羽の先端に僅かに白色が出る程度で全体的に黒っぽく、本種と酷似する個体もいる。本種の翼上面は各羽の先端も含めて暗色であり、白色部はない。


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 飛び立ちや飛翔において、ウミバト以外で冬羽の本種と紛らわしいのは、ウミガラス冬羽である。近距離であれば顔のパターンや嘴の形状で識別は容易だが、中距離以上だと意外と似て見える。ウミガラスが顔から体の後半まで一貫して太い筒型で、海面に対して水平に見えるのに対して、本種は顔、首の部分は細く、胸から腹にかけて急速に太くなるため、体の軸が海面に対して斜めに見える。また、ウミガラス類では下雨覆が白色であるが、本種は初列、次列の下大雨覆がやや淡色であるものの、基本的には翼下面は暗色である点が異なる。


(2011年12月30日   千嶋 淳)


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