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鳥キチ日記

北海道・十勝で海鳥・海獣を中心に野生生物の調査や執筆、撮影、ガイドを行っていた千嶋淳(2018年没)の記録

千代田新水路にワシ観察に来られる方へ

2008-12-16 17:30:29 | 猛禽類
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All Photos by Chishima,J.
オオワシ(右)とオジロワシ・ともに成鳥 2007年12月 北海道中川郡幕別町)

日本野鳥の会十勝支部ブログ2008年12月15日より加筆・転載)

 昨年通水した十勝川の千代田新水路には、冬になるとサケの死骸を求めてオオワシやオジロワシが多数飛来します。2007年12月には、両種で100羽以上を数えた日もありました。その後新聞等で報道されるにつれ、多くの方が観察や撮影を目的に訪れるようになりましたが、残念なことに一部の方はワシに近付き過ぎる、大声で会話するなどしてワシを驚かせてしまい、ワシがそれ以前にくらべて水路内での食事に費やせる時間が少なくなったり、警戒心が強くなってしまうといった事態も生じました。

 今年も12月初めころから10羽以上のワシがやって来ています。ワシの観察・撮影に来られる方は、以下のようなごく簡単なマナーを守って、千代田新水路がいつまでもワシにとってもヒトにとっても魅力的な場所であり続けられるよう、御協力をお願いいたします。

・車で訪れた場合は、なるべく車中から観察しましょう(鳥は人の形をしたものを非常に恐れます。逆に車内から観察していれば、思わぬほど近距離で観察できる場合があります)。

・ワシが首を上げてこちらを見る、群れの中の1羽が飛び立ったなど警戒の素振りを見せた時は、それ以上近付くのはやめましょう。

・車で道路をふさがないようお願いします(他の車や観察者の迷惑になります)。


殺到した観察者
2008年1月 北海道中川郡幕別町
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(2008年12月15日   千嶋 淳)


ハイチュウ的厄日(11月22日)

2008-12-04 20:42:33 | 猛禽類
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All Photos by Chishima,J.
ハイイロチュウヒ(メスまたは幼鳥;以下略) 以下すべて 2008年11月 北海道十勝海岸)


 晩秋の午後は短い。午後一時半、西南の低い空から差し込む太陽は、黄土色の枯野を仄かに茜色に染め、既に夕方の雰囲気を醸し出している。実だけ残ったハマナスが、一際赤く見える。葭原で休息していたらしい1羽のハイイロチュウヒが、野ネズミを求めて地を舐めるような低空での巡回飛翔を始めた。ここまではいつも通りの海岸の午後であった。しかし、この日違っていたのは、ハイイロチュウヒがその出現時から2羽のハシブトガラスに目を付けられ、執拗なまでの付きまといを受けていたことだった。


ハシブトガラスに追われるハイイロチュウヒ
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 カラスは時に単独で、時に二羽つるんでハイイロチュウヒのすぐ後ろを飛んで、隙あらば攻撃を加える。カラスが単独の時には身を翻して反撃に転じることもあったが、二羽で攻められるともう逃げるしかない。逃げ回ってかなりの距離を飛んでいるものの、すぐ後ろからはカラスが迫って来るから、得意のホバリングも駆使できず、狩りはエネルギーを浪費するばかりで一向に成果は上がらない。


束の間の反撃(ハイイロチュウヒハシブトガラス
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多勢に無勢(ハイイロチュウヒハシブトガラス
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 そんなことを暫く繰り返して、逃げ惑うハイイロチュウヒも見飽きた頃、今度は追手に1羽のトビまで加わった。3羽から追われる形となったハイイロチュウヒは、河岸を変える決意をしたのか、3羽を引き連れたまま見えないくらい遠くへ飛び去った。付近にはケアシノスリなど他の猛禽類もいたので、私はそこにとどまった。凡そ十五分後、「ピーィ、ピーィ」との聞き慣れない弱々しい声に目をやると、先のハイイロチュウヒが相変わらず2羽のカラスに追いかけられながら傍らを過ぎ去っていった。完全に付け上がれらてしまったようだ。


ハイイロチュウヒを追うトビとハシブトガラス
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 このままカラスに追われながら日が暮れてしまうのではないかと、他鳥事ながら心配になったが、陽もすっかり低くから射す頃にはカラスも自身の晩餐のためか、或いは本日の御宿のためか姿を消し、ハイイロチュウヒはいつも通り原野のハンターとしての顔を取り戻した。そして、それから程無くして勢い良く飛び込んだ地上から舞い上がった長くて黄色い脚には、しっかりと野ネズミが掴まれていたから、完全なる厄日という訳でもなかったようである。


地上低く飛ぶハイイロチュウヒ
地表近くをふわふわと飛んで、ホバリング(停空飛翔)を交えながら獲物を探す。
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(2008年12月4日   千嶋 淳)



トビのいない町

2008-02-24 12:19:28 | 猛禽類
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All Photos by Chishima,J.
トビ 2008年2月 北海道中川郡幕別町)


 今月の頭、所用で2日ほどオホーツク海に面したある町に出かけた。移動中久しぶりに目にしたオホーツク海を埋め尽くす流氷も印象的だったが、私にとって更に印象的だったのは、トビをまったく見かけなかったことであった。2日間という短い期間とはいえ、海岸や河川沿いの平地、丘陵地など、いかにもトビが好みそうな環境を巡り、オオワシやオジロワシは少なからぬ数見たにも関わらず、トビには出会わなかった。

流氷原
2008年2月 北海道北見市常呂町
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 以前、道北出身の友人から「道北ではトビは夏鳥」と聞いたのを思い出した。気になっていくつかの文献を調べると、道北だけでなく内陸部でも冬に一時的にいなくなる地方があること、またサハリンや南千島などでは季節的に漂行してくる鳥であることなどがわかった。そういえば、晩秋の根室地方で百羽以上のトビが、恰も渡ってゆくかのように上昇しながら西方へ飛んでゆくのを観察したことがある。十勝でも、きちんと数えているわけではないが、秋から冬にかけて、特に海岸部で数が増えるような気がする。北海道で標識されたトビが、本州で再確認された事例もある。もしかしたら今回訪れた町は、冬にトビが渡去してしまうエリアなのかもしれない。
 「所変われば品変わる」とは、よく大きく離れた地域間の違いに用いられる言葉であるが、僅か200㎞ちょっと離れた道内でも、こうした違いがあるのだから面白い。来月頭に同じ町を再訪することになっている。はたしてトビは戻って来ているだろうか、それともまだ不在のままだろうか。


トビ
2008年2月 北海道中川郡幕別町
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河口のトビ
2007年11月 北海道中川郡豊頃町
弱ったサケでも打ち上がるのか、この日の河口にはトビもカラスもカモメ類も多かった。
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(2008年2月24日   千嶋 淳)


コミミ狂騒曲

2008-01-24 13:35:28 | 猛禽類
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All Photos by Chishima,J.
コミミズク 以下すべて 2008年1月 北海道十勝管内)


 十勝海岸の何ヵ所かには、冬になるとコミミズクがやって来る。彼らの渡来数は他の多くの冬鳥同様、年による変動が大きく、殆ど見かけない年もあれば、そこらじゅうで出会う冬もある。今年はどうやら後者のようで、特にその内の1ヵ所には10羽前後が年末から姿を現し、日中から活発に動き回っては我々観察者の目を楽しませてくれている。そんな魅力的な場所には、当然それを見たり写真に収めようとする人が押し掛ける訳で、多い日には20人以上がコミミズクにカメラや双眼鏡を向けている。幸いコミミズクはそれに臆することも無くハンティングを続けているが、彼らを取り巻く人の行動の中に、理解に苦しむ物があったのも事実である。

コミミズク
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 その最たるものが人工の止まり木。コミミズクのいる海岸は元々地元の生活とも密接に結びついた場所だったので、朽ち果てた杭や柵が多く、恰好の止まり場所になっていた。しかし、それらはかつての人工物であることを忘れさせるほど周囲の景観に紛れていたので、それが不満だったのか、より高く突出した杭が目立ち始めた。そうした杭の根元は流木や紐で結ってあり、写真を撮るために意図的に設置されたことは明白だった。


止まり木1(コミミズク
不自然な高さに突出した流木の根元は、また別の流木に補強されている。
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 止まり木を設置したところで、越冬中のコミミズクの生態に負の影響を与えることは無いだろう。コミミズクはむしろ積極的にそれを利用している。しかし、原生花園の中の人工物は私には非常に不自然に感じられた。私はコミミズクももちろん好きだが、この場所とそこが四季折々に作り出す景観、それらが複合して織り成す荒涼感が好きで足繁く訪れているので、そのような人工物を設置されることに対しては、生理的な嫌悪感を覚える。そもそも、そうした「やらせ」で撮った写真は、いくら当該部分が写りこまないようにしたところで、ある程度鳥を知ってる人が見ればわかってしまうのに、何故そこまでして撮ろうとするのだろうか。


止まり木2(コミミズク
この個体も激写されていたが、自然を知っている人が見たら不自然極まりないのは明らか。
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 「自己満足」だと言われれば、「生理的な嫌悪感」という主観的な反論は成り立たないかもしれない。なのでもう少し客観的な反論をするなら、当該海岸の植物群落はその希少性から天然記念物に指定されている。海岸の入り口にはそのことを明記した看板があり、植物の採集や植物(群落)の中での休憩や食事とともに「環境を破壊する一切の行為」が禁止されている。そして、「原形を損傷、破壊した者は相当の処罰を受ける」と結んでいる。元々存在しなかった杭を、周囲の植生を踏みにじって立て、更にそれを周辺の自然物で補強する行為は、原形の損傷、破壊以外の何物でもないのではなかろうか。


止まり木3(コミミズク
最初立ち枯れたセリ科かと思ったが、下部は紐で周囲の草木や石に結ばれていた。
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天然記念物の看板
環境を破壊する一切の行為は禁止されている。警察も街中で善良な市民の自転車を止めるようなことばかりしてないで、こういう場所で不心得者を取り締まって欲しいものである。
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 それと関連して目に余ったのが植生の踏み荒らし。海岸は道以外の場所はハマナス等を主体とする植生に覆われているのだが、そこを踏みにじってコミミズクに近付いたり、人工物を設置しに行く人が多かった。あまりにも心苦しいので注意したこともあった。注意された人の方は、初めの方は憮然としながらも事態を理解すると大抵自らの行為を改めてくれた。自分の行為の影響について考えが及んでいないものと思われる。


撮影会(コミミズクヒト
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 植生への蹂躙で最悪な行為を目撃したのは数日前だった。4人ほどが、50mも歩けば脇道があるにも関わらずハマナス群落を踏み荒らし、更には止まっているコミミズクを追いかけまわしているのには我が目を疑った。そのうちの一人はカメラを持っておらず、機材を持った他の三人を先導する形で砂丘を踏み躙っていた。その後、その人物は帯広在住の「ガイド」で、主にカメラマン相手に野生生物を案内している者だと居合わせた知人から聞いて、今度は我が耳を疑った。「ガイド」!?自然観察におけるガイドとは、自然に対する影響を緩和しつつその魅力を紹介し、観察者に貴重性や保全の必要性を覚醒させるのが役割ではなかったのか。そのガイドが率先して植生を踏み躙っている!「ガイド」だとは聞いて呆れる!そのような欺瞞に満ちた醜悪な行為はいずれ白日の下に晒され、自然を荒らしたいだけ荒らしてきた不心得な輩はその信用を失墜させ、天誅が下ることだろう。


低空から進入して来るコミミズク
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 深夜に酒を煽りながら書いた文章ゆえ、怒り心頭かつ支離滅裂な文章になってしまった。まあいい。今日からの大雪は、あの原野にも天然のバリケードを構築し、コミミズクたちを南に去らせることだろう。そうしたら平静を取り戻した雪原に身を横たえ、潮騒を聞きながらもう一度この問題に思いを巡らせてみたい。


夕焼けの中で(コミミズク
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対面(コミミズク
角を曲がったら目の前にいた。止まっているのは朽ち果てた昔の柵。風化した木目は、最近設置された人工杭と比べて周囲に馴染んでいる。
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(2008年1月24日   千嶋 淳)


遭遇2(オジロワシ編)

2008-01-11 20:11:33 | 猛禽類
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All Photos by Chishima,J.
オジロワシ若鳥に挑みかかるキタキツネ 以下すべて 2007年12月 北海道十勝川流域)


 雪氷によって陸地と繋がった中洲の水際で、1頭のキタキツネがサケの屍を貪り食っていたのは、日々凍(しば)れの厳しくなる12月中旬の朝のことだった。水際から10mほど離れた浅瀬と、そこに打ち上がった流木では、3羽のオジロワシがそれをじっと見ている。もしかしたらさっきまで、彼らのうちの誰かが浅瀬から引き上げて食べていたのかもしれない。キツネの周囲に、僅かな隙を盗んで一片の肉切れでもせしめてやろうと、10羽以上のカラス(ハシボソ・ハシブト両方)が群がっているのは、厳冬の苛烈な食糧事情を物語っている。

ある朝の川岸(オジロワシキタキツネハシボソガラスハシブトガラス;以下カラス類は略)
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 別のオジロワシがやって来て、水際のすぐ近くに降り立ったのを気にしたのか、キツネはサケを水際から数m内陸側に運ぶと、そこでまた食べ始めた。すると、見る見る内に浅瀬のオジロワシたちも飛んで来て、水際では3羽のオジロワシの若鳥が、新たにサケの屍を見つけて食べ出した。しばらくは、キツネは食事に専念し、ワシは自分たちで小規模な争いを時折するものの、大事には発展せず、静かな朝の時間が流れた。


平和な朝食(オジロワシキタキツネ
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 キツネはサケを大方喰い尽すと再び水際を目指した。その際、サケを食べていた2羽のオジロワシ(厳密には1羽が食べ、もう1羽は隙を狙っている)は、サケを残して徒歩で数m後退した。キツネはサケに興味を示して吻を近付けたが、この際食べていたのか、臭いを嗅いでいただけなのかは距離があってわからなかった。1羽のオジロワシが意を決したように接近して両翼を広げると、キツネはあっさりサケを明け渡し、水際で飲水を始めた。どうやら初めからこれが目的だったらしい。おなかも膨れて満足していたのかもしれない。


撤退と奪還(オジロワシキタキツネ

後方に怯んだ隙にキツネがサケに興味を示した。
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1羽が奪い返すと、キツネはあっさり川へ水飲みに。
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 ひとしきり水を飲んだ後、今度はまた内陸に向かって歩き出した。1ヵ所に固まっていた3羽のオジロワシは、再度徒歩で(1羽はサケを掴んだまま)逃げた。しかし、元からその場所でサケを食べていた1羽は退かず、残った。そのことがキツネの気分を害したのか、はたまた悪戯心を刺激したのか、キツネはオジロワシに吠えかかった。実際には声は確認していないが、写真(冒頭のもの)を見ると大きく口を開けている。オジロワシは退くかと思いきや両翼を広げてこれに抵抗し(ワシも鳴いているようだ)、キツネは一瞬怯んだ。そしてごく短い対峙の後、キツネは思い出したように岸へ歩き始めた。


対決2(オジロワシキタキツネ
冒頭写真の次の瞬間。オジロワシが反撃に転じ、キツネは怯む。
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 途中、何ヵ所かの開水面で水を飲みながら戻って来たキツネは、リラックスした表情で小用を足すとそのまま河川敷に消えた。オジロワシたちは、さも「昔からここで食べてました」的な面構えでサケに夢中。僅かに高くなったお日さまの努力の賜物か、少しだけ寒さが和らいだようだ。


氷の割れ目で水飲み(キタキツネ
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リラックスして排尿(キタキツネ
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(2008年1月11日   千嶋 淳)