昭和49年3月7日 52歳で父が他界した。
そして、今日、私は52歳で父の命日を迎えた。
感慨ひとしおである。
とにかく真面目な男であった。
子沢山の大家族の長男として生まれ、子どもの時からずっと苦労したといわれる。
酒で身代を食いつぶしていく父親を見て、自ら、酒を飲まないと心に決めてから奈良漬で顔を真っ赤にしていた。
勉強がしたかったのに貧しさで学校に行けなかった。
だから息子の私を大学に行かすのが夢だった。
しかし、息子が大学に行く前に逝った。
死んだ父の手帳から、歌詞を書いたページが見つかった。
母も私も、父がその歌を口ずさんでいるところを一度も見ていない。
不思議に思ったが、その歌詞を読み込むほどに、その時の父の心情が見えてくる。
当時、我が家は山の中腹のようなところに建っていた。
「谷間のともしび」
J.Lyons.S.C. Hart & the Vagabonds
西原武三 訳詞
「たそがれにわが家の灯 窓に映りしとき
わが子帰る日いのる 老いし母のすがた
たにま灯ともしごろ いつも夢に見るは
あの日 あの窓こいし ふるさとのわがいえ
たにま灯ともしごろ いつも夢に見るは
あの日 あの窓こいし ふるさとのわがいえ」
平凡な日々を大切に思う父であった。
そんな父を嫌った時期がある。
人が想像のつかないような苦労をしてきて、戦争で生き地獄を見てきて、何よりも平凡さの大切さを知り、平凡な日々を送れることを無常の喜びとした父だからこそ、その重みは比べようもないものだったのかもしれない。
誠実に生きるとは、
正直に嘘をつかない。
失敗したら素直に謝る。
思いやりの心をもつ。
今一度、父の教えを胸に刻みながら生きていきたい...