tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

「自家製デフレ」脱出のチャンス! その2

2022年11月06日 13時52分00秒 | 経済
前回纏めてきたところで、重要なことがいくつかわかります。
① 輸入インフが起きたときに便乗値上げや便乗賃上げをしてはいけない
② やってしまったらそれをできるだけ早く正す
③ 正すための方法は欧米流:金利の引き上げで需要を抑える
④ それに対して日本流:便乗値上げも便乗賃上げもやらない
⑤ 金利引上げで欧米では通貨価値が上昇、その結果日本では円安に
⑥ 今回は大幅円安の日本は対応策に困って右往左往

今、まさにこんな状態です。右往左往の中で、政府は為替差損の出る輸入部門に補助金を出そうとしている、輸入関連部門は価格転嫁が進まず苦境に、輸出部門は差益で潤っているが黙っている、企業経営には格差が生じるが政府補助金は部分的、補助金は財政赤字を増やし、財政再建のめどは立たなくなる、といった混乱です。

ここまでなら、問題は多分短期的で、アメリカのインフレが収まれば、アメリカの金利は正常に戻りドル安で$1=110円の方向になっていくと考えられます。

しかし、もう1つの問題は、円安になる前から日本経済は不況続きで、これはアベノミクスの時からです。これを直さなければ、日本は成長経済には戻れません。

日銀黒田総裁流にいえば、原油高も欧米のインフレも次第に収まるでしょう。日本はそれでも不況ですから、好況を取り戻すまで、異次元金融緩和は続けなければならない、という事で、異次元金融緩和に固執するのでしょう。

この「黒田分析」はその通りです。しかしここには金融経済人特有の問題がありそうです。

というのは今アメリカのパウエルFRB議長や、イングランド銀行、ECB(ヨーロッパ中央銀行)もそうですが、インフレを、金融引き締めで抑えようとしています。

これは効率が悪いのです。金融引き締めで景気を悪化させてインフレを抑えるというのですから、パウエル議長が発言しているように、過度の引き締めで景気そのものが悪化することは避けなければならないのです。

「インフレの早期抑制」と、パウエル議長は眉を吊り上げて0.75%の金利引き上げを4回もやりましたが、どうしても時間がかかってしまいます。
つまり金融引締めは間接手段ですから、副作用も気にしながらで効率は良くありません。

第一次石油危機の時は、日本は「直接手段」を取りました、「賃金上昇を抑えた」のです。これは日本の労使関係だからできたといえます。但し効果は覿面です。(影の声:それで「ジャパンアズナンバーワン」になれた)

この自家製インフレを抑えるのに、「金融引締め」か「賃金抑制か」という手段の違いは、実は大変重要だと思っています。これが「労使の話し合い」で出来る国でないと不可能な経済運営の直接手段だからです。

さて、ここまで来て、気が付くのは、前述した黒田さんのが、2%インフレ目標達成まで異次元金融緩和を続ける」という発言です。

そうです、金融政策というのは間接手段で効率が悪いのです。黒田バズーカで為替レートが正常化してから今日まで、金融政策で「自家製インフレ」を実現しようと努力しても、インフレが実現しないのは、金融政策が間接手段だからです。
水を飲みたくない馬は川に連れて行っても水を飲まないのです。

今、日本の労組は、経済成長がなければ賃上げしてもインフレになるだけという第一次石油危機の経験に忠実であるようです。経済成長2%プラス定昇が要求の基本です。

それは外的な要因で経済成長が阻害されている場合に当てはまるもので、経済成長の可能性がそろっている中では、賃上げ経済を引っ張る、つまり、消費需要を増やすことで生産活動を引っ張るという直接手段がないと自家製インフレにはなりません。「自家製インフレ」で経済成長を引っ張り、経済成長が起きれば、その分インフレは消えます。


これは労使が良く話し合って、政府は出来れば参考になるシミュレーションなどを提供し。来春闘で平均賃金の5%上昇、これは非正規の正規化や定年再雇用者の職務と賃金の適正化も含みます、といった形で、労使が本当に日本経済、そして国民生活の将来を考えて、成長経済を取り戻すために、十分考えて、結論を出すべきことでしょう。

来春闘が、日本経済の起死回生の転換点になるよう、労使の活躍を期待します。 

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