tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

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地域金融機関向け特例措置の延長

2012年06月11日 18時01分39秒 | 経済
地域金融機関向け特例措置の延長
 ドメスティックな金融のみに関わる小さな報道ですが、「時価評価」か「保守会計」かという国際会計基準の基本的問題をどう理解するかについての、解りやすい事例のような気がするので、あえて取り上げてみました。

 今月の6日に、金融庁は、標記の特例措置を2年間延長することを発表しました。国内に営業が限られている地域金融機関だけを対象にした措置で、国際業務を取り扱っているところには認められないことですが、長期保有している株などの有価証券が値下がりしている中で、その含み損を自己資本に反映させなくてもいいという特例措置を2年間延長するというものです。

 理由は、今、株価が異常に下げている中で、本来の制度に従って、含み損の60パーセントを自己資本から差し引くと、金融機関の財務比率が悪化し、貸し渋りなどが発生し、中小企業金融に支障をきたす恐れがあるからという事のようです。

 考えてみれば、金融機関が長期保有する株式などは殆どが業績の安定した企業のものでしょうから、リーマンショックのような外的な要因で一時的に株価が下がっても、日本経済が健全であれば、いずれ回復するので、いちいち気にすることはないという、いわば日本的、というか伝統的、常識的な判断で特例措置を2年延長したという事でしょう。

 もともと日本では(以前は国際的にも)取得価格で評価(取得原価法)するとか、株価が低かった時の低い価格で評価する(低価法)という保守的な評価法がとられていたのですが、それだと株が上がった時に表面に出ない含み益が増えて、本当の企業の財務状態が解りにくくなるということで、欧米主導の時価会計が主流になっています。

 株価などというものは、人気投票みたいな面があり人気次第で乱高下します。新技術開発で株価が一時高騰したが、それが製品化さえた時は普通の株価になっているといったことはよくあることです。
 そういう株価の上下で一儲けしようというのは、投資というより投機でしょう。しかし今日の現実を見れば、投資より投機の方が幅を利かせるような状態というのは明らかです。

 そしてそういう動きの積み重ねが、今日の国際金融市場の不安定に拍車をかけていことは明白です。
 時価会計の方がまともで、時価を反映させないことの方が特例措置だと多くの人が洗脳されてしまったというのが現実かも知れませんが、会計における保守主義というのは、長く積み上げられた知恵の産物です。
 経済の安定発展により役立つ金融というのはどちらか、良く考えてみる必要があるのではないでしょうか。


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