tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

最強の為替操作国、アメリカ?

2019年08月13日 17時11分50秒 | 経済
最強の為替操作国、アメリカ?
 為替操作国という言葉が生まれ、それに指定されることは、その国の権威に関わる重大問題になるようです。
 日本なども、何かあると安全通貨としての円買い、円高という結果で、この所も105円台前半という事になり、大変具合が悪いのですが、政府・日銀も当面静観ということで下手に動かないようです。

 円レートは、国際投機資本の思惑次第でしょうから、いちいち反応するよりトレンドを確り把握することの方が大事かもしれませんから、短期には動きようもないのかもしれませんが、日本国民が、アリのように真面目に働いて、きちんと将来への蓄えをしようとすればするほど、円は安全通貨だといわれて円高になり、経済的に損ばかりするというのも困ったものです。

 何でこんなことになったのかといえば、事の始まりはプラザ合意による円高で、さらに遡れば、アメリカが、自らが唱導したブレトンウッズ体制を放擲し、基軸通貨のドルを兌換紙幣からペイパーマネーにして、変動相場制にしまったことが全ての始まりでしょう。

 変動相場制では、マーケット次第で為替相場は自由に動くものになるわけです。
 これによって、国際収支が赤字の国は、経済の立て直しの努力をするより、為替レートを引き下げた方ら楽、という状況が生まれました。

 国際競争力を維持して、経済の健全性を守ってきた国といえば、日本もそうですがドイツ、スイスなどが有名です。こうした国は、自国通貨が高くなることで、その分だけ競争力が弱まり、経済健全化努力の成果が大きく減殺されるのです。

 固定相場制を止めて変動相場制にしたアメリカは、この制度変更を活用して、その後いろいろな事をやってきました。
 まず対米競争力が強くなった日本に対しては、G5の国々の賛同も得て、日本に円高容認を迫り、認めさせました。
 その結果日本の円の価値は対ドルで2倍になり、日本の競争力は失われました。

 その後また大きな世界的な事件が起きました。リーマンショックです。この時、アメリカは、世界金融恐慌を防ぐという大義名分で、ゼロ金利政策を実行しました。その結果ドルはまた大幅に下落しました。日本円との関係で言えば、1$=120円が80円です。日本はまた対米競争力を大きく失いました。

 リーマンショックが世界金融恐慌を引き起こす危険は回避されたかもしれませんが、この問題はもともとアメリカがサブプライムローンという信用度の低い貸付金の残高を証券化し、AAAの格付けで世界に販売し、結局馬脚が表れて、アメリカの債券価格が暴落、それを買っていた世界中の金融機関の資産に大穴が開いたことによるもので、アメリカ金融機関の不良債権を世界中の銀行が負担したようなものでした。

 アメリカはゼロ金利政策の効果でドル安になり、世界で最も早く経済が回復するということなりました。
 日本はアメリカをまねてゼロ金利政策(異次元金融緩和)を導入するまでの5年間最悪の経済状態に呻吟しました。

 金融工学全盛だったこの時期から、金利政策は、本来の金利水準の効果で経済が動くというより、金利を下げれば自国通貨安になるという為替操作の道具になってきてしまいました。

 今度トランプさんが金利引き下げをFRBに強いたのも、ドル安を目指したことは当然で、それを容認したくなかった中国を「為替操作国」に指定したという事でしょう。
 
 日本の事情から言えば、アメリカは固定相場制時代から見れば、対日競争力では1$=360円から80円にまで円高ドル安にして、日本がアメリカの真似をして、120円まで戻せば、また日本に様々な要求を突き付けてきます。

 為替操作国をアメリカどう定義しているかは解りませんが、これまでの経緯を見れば、日本はアメリカの望むドル安を容認して、苦しみながらアメリカとお付き合いしています。
 他方、中國経済は停滞している日本を追い越して、アメリカに迫ろうとしています。そこでアメリカは対日経済政策の中国版を、やろうというのでしょうか。

 しかし中国は、日本とは国家の体制が違いますし、日米経済関係を先例として十分学んでいるようです。対中国は対日よりよほどアメリカにとって難しいものでしょう。
 あまり酷い「こじれ方」をしてとんでもないことにならないように、米中両国の知恵の発揮を期待するところです。

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