tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

アメリカの良識とその盲点

2014年12月19日 16時40分35秒 | 経済
アメリカの良識とその盲点
  アメリカの金融政策も超金融緩和からの脱出の仕上げ時期に入ったようです。テーパリングを終了、いよいよゼロ金利からの脱出に入る日程の論議になるという所です。
 FRBもここに来ては、慎重にならざるを得ません。金利引き上げは急がないけれど、きちんとやる、しかし経済情勢を見極めて・・・、といった姿勢です。

 原油価格の下落はシェールオイル・ガスの開発にはプラス要因ではありませんが、ロシアのようにそれで打撃を受けるわけではありません。シェールオイル・ガスの比重はアメリカ経済全体の5パーセント以内でしょう。

 もともとアメリカの景気回復は国民経済の7割ほどを占めている消費が中心です。サブプライム問題の時は住宅金融→住宅価格上昇→モーゲージ利用の消費増、その一方でサブプライムローンの証券化で世界中からカネを集める、という手法でした。

 今回もガソリン価格の低下で、燃費は悪くても大型のピックアップなどに需要がシフト、自動車向けのサブプライムローンが盛況などといったニュースもありますが、アメリカ経済の好況にはいつも影が付きまといます。

 その「影」はもう疾うにお分かりと思いますが、国際経常収支の赤字です。確かにシェールエネルギーのせいでしょう、GDPに対する経常赤字の幅は、かつての4~5パーセントから2パーセント台に減りました。しかしアメリカ経済が赤字経済であることには変わりありません。

 この赤字を賄うのが金融収支です。その手段の一つとしてアメリカは金融工学を発達させたのでしょう。しかしそれはリーマンショックで破綻、G20でも金融機関の投機行動の行過ぎの規制が言われ、FSBが出来、アメリカではドッド・フランク法が出来ました。

 今朝の朝日新聞のコラムで、P.クルーグマンは、共和党によるドッド・フランク法の規定の後退の動きを厳しく批判していました。ノーベル賞経済学者のこうした論評は影響は大きいでしょうし、アメリカの良識の表れだという感を持ちます。

 しかし残念なことに、アメリカの経常赤字が続く限り、何らかの手段で世界中からカネを調達するという必要から逃れることは出来ません。

 金融機関の行動を規制するというのはいわば末節の問題で、問題の本質的な解決を可能にするのは、アメリカが経常赤字国でなくなることです。これはアメリカの盲点なのでしょうか、それとも、もう解決する気がないのでしょうか。
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 IMFによるアメリカの経常赤字の実績と予想(対GDP比)
  2013年   -2.39%
  2014年   -2.47%
  2015年   -2.64%
  2016年   -2.76%
  2017年   -2.83%


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