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日本企業が、伝統的に雇用を重視しているという事は、労働経済の専門家などの間では、世界的に有名です。欧米先進国でも景気の次第で失業率が10%を超えることは珍しくありません。それに、若年層の失業率は、平均失業率の2倍以上というのが一般的で、若年層の失業率は常に問題になっています。
日本の場合は、失業率は通常2~3%で、どんなに景気が悪くても5%を超えることは殆どありません。
若年層の失業の場合も外国人が驚くう状況で就職氷河期真只中の2001年9月の10.8%が最高記録です。
何故そうなのでしょうか、これは多分日本の伝統文化の賜物で、日本社会が、働くことを大事にし、成人したら家族のため、世間のために働いてお役に立たなければいけないという意識を持っていたからでしょう。
そういう文化の中で生まれた日本企業も、出来るだけ人を雇い、仕事や社会人としての生き方を教え、立派な人間に育てるという意識で「雇用」というものを考え、従業員の育成を企業の仕事、社会貢献と考えていたのです。
この辺りも「企業は利益を上げることが目的」の利益集団という欧米の企業観と、「企業の目的は社会貢献、利益はその結果」と考える日本企業の違いから来ているのでしょう。
一言余計なことを言いますと、この文化の差を認識せずに、欧米流の仕事別の採用、仕事別賃金で学卒定期採用はやめるべし、が良いのだという厚労省の方針が、日本企業を困らせ、経済社会の質の低下を齎しています。
日本の伝統文化の深さに気づかずに、欧米で勉強をして、単純な合理性に影響された学者や官僚で日本社会は動きません。もう一勉強が必要です。
所で、タイトルで「雇用最重視の深堀り」と書いた意味ですが、就職氷河期に日本企業は定期採用の削減・中止、正規従業員の削減、非正規従業員の採用という手段をとって人件費の削減をしました。
お蔭で、失業率は5.36%(2002年)が最高で、若年層失業率も上記の10.8%まででした。
日本の失業率は極端な不況の中でもこの程度までだった、さすがに「日本の雇用重視は本物」と言えないこともないのですが、結果的には就職氷河期問題を生みました。問題は、失業率ではなく「雇用の質」にあったのです。
高度成長の中で、日本の非正規労働者は増えてきました。当時は、家庭の主婦の職場進出、学生アルバイトが中心で、単純業務に慣れてもらえば、それでよかったのです。(規模も雇用者の十数%程度)
しかし就職氷河期の非正規労働者は違いました。本来なら正規採用である人たちが所謂「不本意非正規」として激増したのです。
円高に苦しむ企業が、非正規採用を増やし、従業員の育成、教育訓練の手を抜いたのも、一概に責められませんが、2013・14年、円レート正常化、国際競争力の復元のちも、企業が非正規労働者を多用し続けたことは問題でしょう。
これからの企業は、人を採用する場合、雇用の数や安定に加え「雇用の質」の重要性への視点を明確にするべきではないでしょうか。