tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

当面する経済問題を整理する:円安の分析

2022年04月19日 17時17分58秒 | 経済
政府はインフレ対策に熱心で、来週には方針が出るようです。

今迄の様子では、多分に後追い政策の範囲と予想されますが、今の日本経済の状況を考えれば、より本格的な対策が必要で、当面のインフレ対策もその一部として、それに整合するものでなければならないでしょう。

多分に選挙との関連が考えらえる時期ですが、そういう事は別にして、こうした多様な問題が重なってインフレが起きている現状についての対応策を考えてみたいと思います。

当面する問題はさし当たって大きく3つあるように思います。
① 為替変動によって起きる問題への対処の仕方
② 資源価格等の上昇による輸入インフレへの対処の仕方
③ こうしたインフレ要因を受ける日本経済社会の構造問題

今回は先ず、為替変動に関わる問題を考えてみます。
今日のニュースで、鈴木財務相が「今の円安は悪い円安だ」といったようです。ただし「悪い円安」と、「良い円安」の違いにつての説明はありません。

2013年、14年に黒田日銀総裁が金融緩和政策を取って、大幅円安になりました。この時は誰も「良い円安」とは言いませんでしたが日本としては大歓迎でした。それまで円高で日本経済はデフレ不況の泥沼を這い廻っていたからです。

当時の状況でいえば、1ドル120円ぐらいが日本の実力なのに、為替レートは80円でしたから120円になって、これでデフレは終わると皆ホッとしたのです。

政府・日銀はデフレにサヨナラし少しインフレぐらいが良いとい考えて「2%インフレターゲット」を政策目標にし、2年ぐらいで達成すると言いました。

しかし日本人は、インフレ嫌いなので、円安の分をすぐに値上げするようなことをせず物価は安定させて国際競争力をつけるという選択をしたのです。
結果的に、日本は物価が安い国になり、コロナ流行の前の「インバウンド全盛」、「日本で買い物旅行が大繁盛」ということになっています。
これが続けばよかったのですがコロナ禍に入り、インバウンドも来ない、物が売れないということになりました。

安くても売れればビジネスはやれますが、売れなくなったら、やっていけないところにコロナです、そしてその上に、アメリカの利上げで低金利路線の日本は円安です。

では、円安によるインフレ効果は、正味でどのくらいかと言いますとこんな計算でしょう。

1ドル115円が127円になって12円の円高です。輸入品は一律約10%の値上りです。輸入品はGDPの約1割です。日本経済の1割のものが10%値上がりしました。GDPデフレータにして1%です。現状の円高によるインフレはこの程度です。

ただ、アメリカも含めて経済が正常であれば、日本にとっては必要のない円安で物価が上がるのは良くない円安だから「悪い円安」なのでしょうか。

それではと輸入の反対側の輸出を見れば、輸出も現状偶々GDPの約1割です。ですから10%円安になると、為替差益が(GDPの)1%分出ます。
輸入の値上がり分と同等の金額が輸出では円安による収益増になるのです。輸出部門では大変に有難い円安という事になるのです。

理屈から言えば、輸入の値上がり分を完全に価格に転嫁し。輸入の差益分を完全に適切にGDP内に分配すれば、日本の物価水準が1%上がって、損得は誰にも起きないのです。

価格転嫁が出来なくて、為替差益は輸入部門が独り占めでは、経済活動は。ぎくしゃくします。

でも円レートは上がったり下がったりしますから、その都度損得が起きて、長い目で見れば結局損得はチャラという事で済んできているのでしょうか。

為替レートが10%動いても、それだけでは、経済全体への影響はこの程度という事をご理解頂ければと思います。

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