tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

実質賃金マイナスでは好況は来ない

2024年05月10日 14時39分55秒 | 経済

実質賃金が前年比マイナスという月が連続で24カ月になりました。円安でトヨタ自動車の利益が5兆円に届きそうだとか、主要商社の利益も7社中5社で歴代2位の好決算などと言われていますが、平均賃金がまる2年間も前年比実質マイナスでは好況感を感じろと言っても無理でしょう。

外国から来るお客さんは、ラーメンもスシも安くてうまい、お店も綺麗でみんな親切、日本は最高だねと言ってインバウンドは絶好調で、お役所はオーバーツーリズム(お客の来過ぎ)をどうしようかと心配だというのですが、何だか日本人は低収入を我慢して、外国人にサービスするのが仕事か、などと言いたくなる状況です。

日銀は、こういう状況は一時的で、その内、実質賃金もプラスになりますから、好況感も出て来ますというのですが、最近は、「その内」が来年になるのではなどという見方もあるようです。

このブログでも6月ごろには遅くとも実質賃金は黒字転換とみてきましたが、中小下請けの賃上げ状況などの情報が入ってくると、やっぱりもう少し賃上げが欲しかったかななどと考えたりしています。

それに加えて、アメリカのインフレがFRBの予想以上にタフで、なかなか収まらないという事でFRBが金利を下げる時期がどんどん遠くなると、円安がさらに進むのではないかといった国際投機資本の動きも心配です。

財務省では円安が進み過ぎると輸入インフレが起きる恐れがあるから為替介入をしてでも、円安の進行は止めると言っていますが、効果は限定的でしょう。

日銀が金利を上げれば円安は簡単に収まるでしょうが、金利が上がると借金だらけで対応の準備が出来ていない政府は困るでしょう。

当面、アメリカは強いドルの方が都合が良いといった状況も考えられますから、投機筋の思惑による円安の行き過ぎをいかに防ぐかが、財務省、日銀の腕の見せどころでしょう。

とはいえ、そうした短期的なテクニカルな解決策だけで為替が本格的に安定することはないでしょうから、経済政策の在り方の再検討も必要なのではないでしょうか。

アメリカでは賃金が上がって、サービス部門が元気ですが、住宅部門や財の生産部門が不振のようです。もともと無理感のあるインフレ目標2%を3%にすれば、多分動きやすくなるだろといった気がします。

賃金の上がらない日本では、労使が物価の上昇を勘案して賃金の引き上げ幅をも少し大きくして先ず実質賃金の上昇を実現し、その後でインフレ目標2%に改めて挑戦というのが、やり易く、国民も安心するシナリオではないかとった感じがします。

変動相場制の下では、国際投機資本の思惑で、為替レートの行き過ぎや乱高下は避けられないでしょう。

つまり経済政策を策定しても、為替レート次第で、実体経済の動きが計画通りいかないといったことが起きる可能性が大きいわけですから、経済計画の目標数値なども、柔軟に臨機に読み替え組み換えをして、政策当局や労使や国民が対応し易いように考えることが必要なのではないかという気がするところです。


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