tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

賃上げは日本経済のバランス回復に必要

2023年01月19日 14時17分59秒 | 労働問題
これから日本経済は春闘の期間に入るわけですが、前回指摘しましたように、今年はまさに異例の年で、労使が共に賃上げの必要を力説しているのです。

マスコミを見ても、労使だけでなく政府も学界も評論家もみんなが、賃上げが必要と言っているのですから、必要なことは間違いないでしょう。
今回は、何故そんなことになったかを確り見ておきたいと思います。

話は1985年のプラザ合意、1991年のバブル崩壊にさかのぼりますが、プラザ合意による円高とバブル崩壊でその後30年ほどに亘って日本企業は賃金コストの引き下げに必死でした。賃金水準を下げなければ企業が死ぬ事(破綻・倒産)になるからです。

それからリーマンショックによる円高もあり、日本企業は2012年まで、賃金コストの引き下げと生産性向上に懸命の努力をしましたが、円高分の賃金コスト引き下げには至りませんでした。

それを救ったのは日銀の異次元金融緩和政策で、円レートは1ドル80円から120円の円安に戻り、対外的には日本経済はバランスを回復しました。
対外的なバランス回復は、国内の経済バランス回復のチャンスでしたが、日本はここで対応を誤ったのです。

円安で日本の産業は国際競争力を回復し、企業収益は順調に増大しました。しかし企業は、これまでの賃金コスト引き下げ必要という意識から抜けられず、国際競争力回復の恩恵(円建ての付加価値増加)を賃金上昇に配分する必要に気付かなかったのです。

端的に言えば、円高になった時の賃金引き下げた分は、円安になったら賃金引き上げで元の戻さなければ、国内経済のバランス(賃金と利益のバランス、投資と消費のバランス)は回復しないという事に気付かなかったのです。

これはアベノミクスの初期にキッチリ労使がやらなければならなかったのですが、企業は円安にホッとしただけで、増収増益に浮かれそこまで気が回りませんでした。

連合(労働サイド)は、これまでの賃金引き下げ要請がなくなり、定昇主体の賃上げが可能になったところで安心し、下がった賃金水準の復元の要求をしなければならない事に気付かなかったようです。

こうした、現状認識の遅れによる国内経済バランスの悪化は、長期に亘る消費不足経済、貧困家庭の増加、将来不安・老後不安の増幅もあって、健全な日本経済社会の回復に大きな障害となってしまったのです。

偶々昨年来の急激な輸入インフレに直面し、賃金への配分の不足が顕在化し、今迄の対応では日本経済の回復は不可能と気づくことになって、その修復を今春闘から始めようという事になったことは、些か遅かったとはいえ、本当に良かったと感じるところです。

今春闘に関しては、それが単に輸入インフレで消費者物価の上昇が4%に達したからといった短期的なものではないという事を認識すべきでしょう。

これまでの長期不況を下敷きにした、日本経済の配分構造の是正という大きな課題解決の第一歩という本質的、構造的な視点を見落とさない事が重要と考えるところです。

さらに、問題はもう一つあります。それは、より詳細な雇用・賃金こうぞうの検討を必要としますが、「非正規労働者の増加」という問題です。これは次回確り見ていきたいと思います。

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