tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

アメリカの金融利上げ強硬策の行方は?

2022年07月29日 15時36分54秒 | 経済
FRBのパウエル議長のインフレへの警戒感は大分強いようです。
何と言ってもドルは基軸通貨ですから、基軸通貨国のインフレが先進国トップクラスのものですと、これは基軸通貨の権威にかかわるという事でしょうか。

パウエルさんは法学博士で、経済についての経験は投資銀行の役員を務められたという事ようですが、この所の政策の強硬さを拝見しますと、やはりドルの権威という問題に大変真剣なのではないかという感じを受けます。

バーナンキさんの時はリーマンショックによる世界金融恐慌になるかという大不況からの回復が政策目標で、超金融緩和でそれに対抗し、成功を見たという事でしょう。

今度は、資源価格の値上がりに加え、コロナ、国際紛争という経済活動の目詰まりの結果の国際的インフレが、主要国でも物価高を齎すという状況が、広く発生しました。

そして、それを契機に、これまで温和しかった労働組合が目をさまし、物価高による市場賃金の上昇に加えて、更に労働組合の力による賃金上昇で、賃金と物価のスパイラル症状が久方振りに起きて来たといった問題への対策です。

国際関係やコロナによる物価上昇は、国際関係が正常化し、コロナが何とか収まらなければ、解決はないのでしょうが、実はアメリカやEUの8%~10%というインフレの半分以上は、各国の中での賃金上昇による賃金コスト上昇によるインフレなのです。

その証拠には、賃金を余り上げない日本では物価上昇はせいぜい3%程度です。
(正確には 賃金上昇率-生産性上昇率=インフレ率)

という事になりますと、パウエルさんの政策の目的は、「賃金上昇率を抑制し、アメリカ経済の中で、賃金コストインフレを出来るだけ低くする」という事になるのでしょう。

そこでそのために、金融を引き締め、企業活動があまり活発にならないように経済活動を抑制し、要求すれば容易に賃金が上がるといった環境ではない事にみんなが気付き、賃金上昇を抑えて、インフレを鎮静化するという事になります。

現状認識としては「今のアメリカ経済は過熱状態で、求人倍率も高く,賃上げもしやすいから、金利引き上げで熱さましをし、景気が悪くならない程度のところで金利上昇も止めて景気を持たせながらインフレを抑える」という事を実現するという立場でしょう。

FRBは、今回までは0.75%と言う大幅利上げを予告していましたが、多分ここまで上げれば賃金上昇もいくらか鎮静化し、インフレの激化も止まり、景気は何とか持つぐらいの状況になると読んで、次回の金利上げ幅は状況次第という説明になっているのではないでしょうか。

基軸通貨国アメリカのおひざ元で、基軸通貨の価値を揺るがすようなインフレでは、不穏な国際情勢の中で、余計な問題が起きますから、パウエルさんの金融政策が成功して、アメリカのインフレが鎮静することを願いますが、結果はどうでしょうか。

前々回は、ドイツのルフトハンザのストライキについて見ましたが、欧米の労使関係は、労使が自己主張を前面に対立するのが「本来の在り方」といった意識が一般的で、日本とは大分違うのです。

既にアメリカの中でも、金利引き上げの効果が強過ぎて、住宅所得などの低迷も予想され、景気減速の恐れが出るのではないかといった意見もあるようです。

リーマンショックの大不況からの脱出には、世界に先駆けて成功したアメリカですが、今回は、過熱気味のインフレ退治です。見事成功するかどうか、見守りたいと思います。

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