今回もトランプさんに関わる問題になってしまいます。
ロシアのウクライナ侵攻の問題にトランプさんが積極的に動く際の問題意識と、ロシア、ウクライナの立場、そしてこうした問題に対する判断についての国際的な正義の基準を示す国連憲章といった各要素を整理し、これからの国際社会の在り方をどう判断すべきかという大変難しい問題について、出来るだけ冷静に考えてみたいと思っています。
事の起こりは、ロシアが、全く自分の都合だけでウクライナに侵攻したことです。
これははっきり言って、ロシア国民がそうすべきだと考えていたからではなく、今では完全な独裁者になっているプーチン大統領の心か頭にあった個人的な願望が、その独裁力で国力の発動として顕現したものと思われます。
これは、モスクワ放送局で関連ニュースの際、放送局のスタッフが「これは嘘です」と書いてカメラの前に広げたという異常な事態から明らかになり、さらに広くロシア全土で反対デモが多発したことからも知られます。
しかし、独裁者の支配する国は、独裁者の決定が国の意思になるのが通常ですぅから、国際的には国の意思による行動になります。
勿論これを国連が認めるものではありませんが、ロシアは国連の安全保障理事会の常任理事国で拒否権を持っていますから、常任理事会で反対の決定は出来ません。国連はほぼ無力で、事務総長の個人的見解も、総会の決議も無力です。
ウクライナは徹底抗戦と言っても、民主主義国で、軍事力に大きな格差があります。それに、それに民主主義国と独裁国ということになりますと、独裁国が圧倒的に有利なのが一般的でしょう。
ウクライナは、NATO,アメリカの支援も得て抗戦しましたが、当初は、ロシア国内へ戦火を及ぼさないといったアメリカの制約もあり、戦火はウクライナ国内で始まり、東部諸州での戦闘が続く状態になっていました。
こうした状況の中でのトランプさんの和平提案です。主な内容は侵攻前からロシアが実効支配していたクリミア半島はロシアに帰属、過半の部分を支配している東部4州はロシア領、ザポリージャ原発はアメリカ管理、という事で、出来るだけ早く戦争を終わらせるべきだという内容のようです。
ロシアは領土的には当面の目的達成ですが、決まるまでは戦争は止めないという姿勢のようです。
ウクライナにとっては、ロシアからの無人機やミサイルの攻撃で、毎日のように民間人の死傷者が出ている状態の中で、「できるだけ早く戦争を終わらせる」という言葉大変重いものでしょう。
ゼレンスキー大統領は、まず戦争をやめ、そして交渉という意見のようですが、国民の生命の損傷と領土の割譲の在り方の選択を迫られる状態です。
ウクライナにはクリミヤは本来自国のもの、東部4州でも占領されていない地域もあり、その部分は割譲したくない、さらに基本的には一方的に侵攻してきたロシアに領土を割譲すべきではないという気持ちは強いでしょう。
そしてその考え方は、国連憲章の「力又は威圧による(国境線の)一方的な現状変更の試みは決して認められてはならない」に違反するという事になるはずのものです。
今日の問題はウクライナとロシア、それに仲介のアメリカの関連するディールと権威の調整問題ですが、本来の大きな問題は武力を含む圧力による「国境線の変更」です。
しかし、今後の国際関係の在り方を考えた場合、ここで安易に国境線の変更が行われるという事になれば、今後の多様な国際関係の中で、国連憲章違反であるその現実が、いかなる影響を持つかという深刻な問題が残ります。
戦後アメリカが主導した国連の基本方針である国連憲章に、アメリカの仲裁案は明らかに違反しているのです。
国境線問題もディールの一部と考えているトランプさんは、国連憲章をご存じなのでしょうか。
それとも、グリーンランド問題に見るように、アメリカのためには「それは邪魔だ」との考えなのでしょうか。
国連憲章が、当面する問題の解決のために反故にされた場合、今後の世界秩序はどうなるかという問題を、国連を中心に、世界全体で考えなければならないのではないでしょうか。