昨日の毎月勤労統計の実質賃金指数の検討で、今春闘での賃上げが、昨年に続けてかなり活発だったことから、今年あたり何とか実質賃金がプラスになる可能性はありそうかという点を見てきました。
見当がつくには、もう少し時間は必要で、つまり春闘の結果が出つくして、名目賃金指数の上昇率が、どこまで行くかはっきりする。
もう一つは、この所コメの価格上昇などを中心に消費者物価の上昇が顕著でしたが、これが何とか落ち着くかどうか、その辺りにかかっています。
具体的な数字でいえば、今春闘の結果が平均の「月例給」(きまって支給する賃金)の上昇をもたらすのが、多分順調にいっても名目値で3%程度まで(昨年は2.5%程度)でしょうから、消費者物価の上昇が3%を切れば切った分だけ実質賃金の大前年比はプラスということです。
しかし消費者物価の上昇率を見ますと、今年に入って高止まりで4月は3.6%ですから、この分では、月例給で見る限り実質賃金は前年比低下が続きそうな気配です。
実質賃金が上がる月があるとすれば、それは去年のようにボーナスが良かった月ということになりそうです。
実質賃金が上がらない年がいつまで続くのですか、という情けない事になりそうですがそれも仕方ないのでしょうか。
経営側の総本山である経団連でさえ「物価上昇を上回る賃金上昇を」といっているのですがそうなるのは容易ではないのです。
日本経済全体から見てみれば、このところは殆ど実質ゼロ成長です。経済そのものが実質ゼロ成長ですから、その中で実質賃金が高くなるということは別の所が減らなければならないのですが、賃金に一番関係が深いのは企業利益です。
経団連が「物価上昇より高い賃上げ」といっているのは、賃金が減ってもいいという意味ではなく、GDPというパイを増やして物価上昇を上回る賃金上昇を可能にしようといっているので、それが最も合理的な方法だということは解かるのですが、経団連にも、経済成長を起こす力はないようです。結果は現状に終わっています。
ゼロ成長の中で物価上昇より高い賃金上昇を実現するためには、経済学的には利益を減らすしかないのです。
それでは生産・流通が元気を失い、経済が発展しないことになります。これが今の日本の状態でしょう(利益の出るのは輸出産業が中心)。
ということで、今考えられているのは、思い切って賃金を上げ、「国内の消費を活発にして」生産・流通を元気にし、GDPを増やして、それを皆で分けようというwin=winの経済です。
然し、そのレベルまで賃金が上がらないので、利益確保で上がる物価の上昇率のほうが賃金上昇より大きく、消費は増えないということになります。それを政府が、補助金や給付金で繕っているのです。
基本は、日本全体が元気を失っているというところにあるのではないでしょうか。