tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

変動相場制の問題点、円安にどう対応する

2024年04月19日 14時14分54秒 | 経済

日本では円安がまだ進むのではないかという心配があるようです。円高も困りますが、円安も心配というのが米・日・韓の財務相会談で日、韓の意見のようです。

アメリカにしてみれば、ドル高で円安、ウォン安を狙っているわけはなく、アメリカ自身のインフレを抑えるために政策金利を引き上げているだけだというでしょう。

つまりは円安やウォン安は日本や韓国でそれぞれに対応するよりないという事になるのではないでしょうか。

円安の問題点は、いろいろな形でこのブログでは取り上げて来ていますが、ご質問もあり、ここで纏めて整理しておきたいと思っています。

円安は基本的には日本経済にとってはプラスの方が多いでしょう。これは日本のような加工貿易立国の国では円安になると国際競争力を持つ産業分野が増加して国として国際競争力が強くなるからです。かつては「為替ダンピング」という戦略もありました。

では今の時代、何が問題かと言いますと、輸入品の値段が上がりますから、輸入原材料価格の上昇で、コスト高・収益低下になる部門と、円安差益で利益が増える輸出部門の明暗が生じ、国内での付加価値(GDP)の分配、つまり所得の分配に歪みが生じることが問題なのです。そこで問題はその歪みをいかにして是正するかという議論に発展します。

この問題は世界的に見ても、上手く行かない事が多いようです。例えば、トルコやアルゼンチンを見ますと、輸入物価が上がり国内物価が上がりますと賃上げ要求が激しくなり、物価・賃金のインフレスパイラルの激化で経済が混乱しています。

輸入物価が上がって国内インフレになるのは最近のアメリカ、ヨーロッパにも見られるところです。(米・欧ともに困って政策金利引上げでインフレ抑制に走り、そのとばっちりが日本の円安です。)

日本の場合は例外的で、輸入物価が上がっても国内物価をなかなか上げませんし、賃上げ要求の激化もありません。

その結果は、輸出部門は高収益を満喫、輸入部門は政府が補助金を出して救済、赤字財政の深刻化です。

その中で所得の増えない家計部門は貧困化し、消費不振で経済成長はストップ、増加するのは、国債発行残高と、海外投資収益(第一次所得収支)輸出企業収益という事でした。

今年になって初めて連合も政府も経団連も、何とかしなければと考え、日銀も危機的状況と感じて、分配の無かった家計部門に「賃上げで分配を確保」しようと考え始めました。

今春闘で注目すべきは政府機関の「公正取引委員会」が「仕入れ価格」の上昇と「賃金」の上昇については「販売価格に転嫁を認める」という方針を明確にしたことです。

理論的に言えば、輸入原材料価格の値上がりと、合理的な賃金上昇のコストの価格転嫁が行われれば、円安による国内の付加価値配分の歪みはほとんど解決されるという事になるのです。

ここで2つほど問題が残ります。1つは、年に一回の賃上げで、円レートの変動と賃上げ幅を上手く合わせられるかです。これは連合と経団連の仕事ですが、日本の労使関係では出来るかもしれない(賃金インフレも消費不足も起こさない範囲の賃金決定)と考えます。

もう1つは、為替レートの動きを合理的なものにできるかという問題です。今度の円安も、アメリカの労使が起こしたインフレを、FRBが抑えようとして政策金利を引き上げたためです。

基軸通貨国が自国の都合で行う政策が日本の円安を引き起こし、そうしたチャンスを利用してキャピタルゲインを得ようとする国際投機筋の思惑で揺れ動くのが為替レートです。日本にはどうすることも出来ません。

勿論日本だけではなく、変動相場制であれば避けられない事です。答えはFRBかIMFに出してもらいましょう。