円安が進行しています。鈴木財務大臣は「あらゆる手段で為替の安定を」と言っていますが、マスコミはこの種の発言もあまり効果がないなどと言っているようです。
元々の原因はアメリカの景気が結構強く、雇用も増加し、賃金も上昇、インフレ再燃の危惧もあるような状態で、FRBも予定通りの利下げが考えられないようだという事でしょう。これでは当面日米金利差縮小は無いと国際投機資本は読むことになります。
円安は当面の日本経済にとっては輸出企業の収益やインバウンドの増加など、色々な面で好都合で、沈滞している日本経済の活性化に役立ってくれるという効果もあるわけです。
アメリカ経済がFRBの目的にそってインフレ率が2%水準に低下し、政策金利が順次引き下げられ、そのたびに円高が進むという状況が順調に進捗する方が、本音を言えば、日本経済には恐ろしいという事ではないでしょうか。
日銀短観には、調査対象企業の今期、来期(先行き1年)の円レートの予測の平均が載っていますが、最近の短観では今年度の上期・下期は共に141円台という見通しでじり高という事になっています。
今の日本企業の高収益の原因として150円前後の円レートはかなり大きな寄与をしているはずですし(今日の新聞にも「ファーストリテイリング(ユニクロ)最高益」とか、人流回復でコンビニが好調といった記事が見られます)、バブルではないかなどと言われる株価にも大きく寄与していると思われます。
3円ほどの円安でインフレ傾向を心配するという事も大事ではありますが、企業が軒並み10円ほどの円高を予想している事が現実になった時の日本経済の受ける負のインパクトを本気で心配しなければならないという事の方が、考えてみればもっと大事ではないかという気もします。
アメリカの雇用、賃金物価の状況を見ますと、雇用の1か月間の増加ペースが昨年3月14万6千人で、今年の3月は30万3千人ペースになっているようで、賃金は、この3月が前年比4.2%の伸び、消費者物価は3月で前年比3.5%、エネルギー関連は下がり気味ですが、「食料とエネルギーを除く総合」、いわゆるコアコアは3.8%の上昇という形で賃金インフレの気配です。
もともとアメリカはインフレ体質の国ですから2%インフレ目標というのはかなり無理といった感じですが、3%台のインフレで経済が元気というのは、ある意味では羨ましいという事ででもありましょう。
基本的に、日本経済は、アメリカの動きに大きく影響されざるを得ないようで、プラザ合意やリーマンショックで円高、今回はアメリカのインフレ退治のための金利引上げで円安といった事になってしまうのです。
そうした経験の中で見れば、今の円安は過去の円高に較べれば、逆に日本にとっては、経済活性化のチャンスと言えるような状態ではないでしょうか。
3円の円安を心配するよりも、この避けられない状態をチャンスと捉え、円安を適切に活用し、早期に日本経済の体質強化にいかし、世界の中で、ここまで堕ちた日本経済の本格的な再生に、役立つような上手な政策を確り考えていく事が大事なのではないかといった感じもします。
財務省や日銀が、どんな秘策を編み出してくれるかと期待したいところですが、これからどんな政策が出て来るのでしょうか。国民みんなで注視しましょう。