春闘の結果が昨年よりだいぶ高い水準になりそうな気配です。
連合が要求基準を昨年の5%から「5%以上」とし、経団連の十倉会長も昨年以上の賃上げが望ましいと明言するような、今までにない春闘情勢ですから、かなり高めになるだろうとは大方の予測でした。
大手は集中回答日に満額妥結が続出、連合の集計結果は5.28%でしたか、その後も大企業の集計は5.24と高止まりのままの様です。
関心はいま中小企業に移って来ていますが、中小企業も4%越えは確実で、現時点では4.42%。連合では、更に高まる事を期待しているようです。
何れにしても昨年の平均3.6%より大幅な上昇で、これでアベノミクス以来長かった低賃金デフレ」型の消費不振による低成長経済を脱出が望まれるところです。
一昨年から今年にかけての22カ月連続で実質賃金が前年割れといった不名誉な記録を作った異常な日本経済にも転機が来たとの期待は大きいでしょう。
この不名誉な記録は、一昨年から昨年にかけての不況下のインフレという奇妙な事態によるものですが、この状態も昨秋から次第に正常化してきているので、実質賃金の前年比プラスという正常な状態も近づいていると言えそうです。
ただ、統計資料から実情を見ていきますと、物価上昇率よりも賃金上昇率の方が高く経済性緒がそれを支えるという健全で正常な日本経済が定着するのには、未だ努力しないければならない問題があるようです。
春闘賃上げが4~5%以上で、消費者物価の上昇は3%程度なのだから、実質賃金上昇は確実とは言えないのです。(春闘賃上げ率は定期昇給も含んでいます)
賃金関連指標の対前年上昇率(%)
資料:毎月勤労統計、家計調査
上のグラフの様に、毎月勤労統計の名目賃金指数の上昇(青)は、昨年の3.6%の賃上げ率よりかなり低く、家計調査の勤労者世帯の名目実収入(赤)は前年比マイナスの月の方が多いのです。賃金上昇が中小から零細、更に多様な勤労者全体に行き渡るのは簡単ではないようです。
賃金の問題に加えて物価の問題もあります。この所物価を押し上げていた食料品や日用品(いわゆるコアコア物価)の上昇率はまだ3%台です。さらに、ガソリンや電気・ガスの補助金もいずれ止める日が来るでしょう。これらは概算で1%以上消費者物価を引き上げるでしょう。
更に、今春闘では賃上げ分の価格転嫁を公的に認めました。すでに4月から値上げという話も少なくありません(きちんと計算すれば賃金コスト転嫁で賃金より物価が上がることはありません)。問題は便乗値上げです
もう1つ付け加えれば、国際関係があります。原油などの値上がりや、円安の進行といった問題です。これは国内ではどうにもなしません。
そして最後に、経済成長率の問題があります。今年度の実質経済成長率(≒日本経済の生産性上昇率)は昨年度より下がって1.3%(昨年度は1.6%)というのが政府の見通しです。
生産性が上がって、その分物価は上がらなくて済むというのがベストの状態です。
何か、意地悪い事ばかりを並べたようですが、一度歪んでしまった経済を正常に戻すという事は、そう簡単なことではないのです。かなりの努力が必要になるのでしょう。
その中で、最も重要なことは、何といっても「生産性の向上」なのです
昔からの諺でいえば、「稼ぐに追いつく貧乏なし」でしょう。今年は日本、日本人の実力が問われる年になるのではないでしょうか。