tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

トヨタの決算発表と今後の日本経済

2015年08月05日 15時48分31秒 | 経済
トヨタの決算発表と今後の日本経済
 昨日、トヨタの本年度第1四半期の決算が(東証の取引終了後)発表されました。営業利益が前年同期比で9.1パーセント増加し、7560億円の過去最高になったというもので、年度通期の予想でも最終利益で3パーセント台の増加を見込むなど順調な経営状況を示すものでした。

 一夜明けて、今朝の東証ではトヨタ株は、午前中に200円以上も下げるという展開です。前日のNY市場の下げもあったからとか、もっと大幅な業績アップを期待していた投機筋もあったのかもしれませんが、この辺りにも実体経済と株式市場の意識の違いが見えるように思います。

 一昨年、昨年と、主要な日本企業の多くで、急速な業績改善が見られました。この原動力は言わすと知れた黒田日銀の金融政策による、$1=¥80から$1=¥120の円安です。
 いつも書いていることですが、円安は、輸出企業に差益を齎すだけではありません。日本の国内コスト(物価も)が「120から80円に」下がったわけですから(勿論ドル建て)、その恩恵はすべての国内企業に及びます。(観光客も爆買いも増えます)

 プラザ合意以来、長期の円高で苦労した日本経済ですが、為替レートの正常化で息を吹き返すことになったわけで、円安が進むプロセスでは「予期せざる業績改善」が起こります。

 ところでどうでしょうか、これ以上の円安を予想する向きもないではないですが、そのほとんどは投機筋です。実体経済を見れば、今の為替レートを安定させることが適切と考えるのが正常な感覚でしょう。

 ということになると、今後は、過去2年のような「予期せざる業績改善」は消えていくでしょう。日本企業、日本経済は、安定した為替レートの下で「地道な」経営・経済活動をすることになるでしょうし、政策当局もそれを心掛けるべきでしょう。

 中国流の表現を借りれば、今後の姿が日本の「ニュー・ノーマル」という事ではないでしょうか。

 これもいつも書いていますように、何時も真面目に頑張る日本企業です。国内は勿論、世界での多様なビジネスチャンスを見出し、それぞれの社会に役立つような技術開発で先行し、それぞれの社会が貧困を克服し、より快適な生活が可能になるような貢献をしていけば、安定成長路線は十分達成可能でしょう。

 丁度今が、経済の変わり目でしょう。例えて言えば、「円安の進行というお祭りは終わった。堅実な成長路線を如何に模索するか」がこれからの課題でしょう。日本人、日本企業の真価が問われる時代に入るようです。