tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

2015春闘:経済成長に役立つ賃上げとは

2015年02月11日 22時49分19秒 | 労働
2015春闘:経済成長に役立つ賃上げとは
 「過ぎたるは及ばざるが如し」という諺があります。賃上げも同じです。合理的な賃上げの幅、経済や経営にとって適切な賃上げの幅というのはあるはずです。

 人間は豊かで快適な生活をするために経済活動を行ってきました。A.マズローの欲求5段解説で言えば、人間の欲求は、生理的欲求→安全欲求→社会的欲求→承認欲求→自己実現欲求と進んでいくということになっています。
 それらの欲求を満たすたすことが動機づけになって、人は働くというのです。

 企業というのは、このサイクルを出来るだけ巧く回していくために、人間が考えたシステムと定義するといいと思います。企業はその本来の目的に忠実でなければなりません。
 ですから、成果が上がれば、それを企業を支える人たちに適切に配分して、支える人たちを動機付け、さらにいい貢献をしてもらうように考えます。

 企業を支える人たちとは誰かというと、人間と資本です。人間には賃金を払い、資本(実は資本を提供してくれる人)には資本費(金利、賃借料、利益)を払います。(注)
 企業が成長すれば、こうした配分は大きくなります。従業員や資本提供者は満足し(動機づけられ)より確りと企業を支えてくれます。

 ここで、「企業が成長すれば」というのは、経営学で言えば、「企業の生産する付加価値が増える」ことです。国の場合は付加価値はGDPですから経済成長です。
 ということで、賃金を上げるというのは「付加価値生産が増えているから(国なら経済成長しているから)その配分である賃金を増やそうということです。

 こう見て来ると、賃金を増やすのは、企業なら付加価値の増加、国ならGDPの増加に従って増やすのが合理的ということになります。
 ただ、賃金は通常1人当たりですから、比較対象は1人当たりの付加価値(付加価値生産性)や働く人1人当りのGDP(国民経済生産性)の向上です。

 ということで、賃金引き上げの最も基本的な基準は「生産性の向上」になりますが、経済や経営は物理や化学の実験と違って、予測と現実の誤差も大きく、それをうまく均すのが経済政策ということでしょう。

 結果的に賃金に配分し過ぎたか、資本費に配分し過ぎたかは「労働分配率」に現れます。生産性上昇率<賃金上昇率ならインフレ傾向、生産性上昇率>賃金上昇率なら消費不振(デフレ)です。
 幸いなことに、日本経済は差し当たって、安定した成長路線を進みそうです、というより進めなければなりません。そのためには、賃金と生産性の関係も中期的に安定(労働分配率も安定)したものにしていくようにすべきでしょう。
 さてそのためにはどう考えるべきでしょうか。

(注)資本費の内、金利は借入金に、賃借料は借りている実物資産に、利益は資本提供者に対応するものです。このうち、利益の一部は配当として株主に直接支払われ、残りは会社の自己資本として、社内に蓄積されます。蓄積の大きい会社は株価が高いので、それは株主へのリターンということになります。