tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

賃金問題の理解に必要な2側面

2015年02月24日 10時08分42秒 | 労働
賃金問題の理解に必要な2側面
 今月中旬、春闘に関わる賃金問題について書いて来ましたが、関連する質問などもあったので、賃金問題の二側面について書き足しておきたいと思います。

 賃金問題というと、通常は、年功賃金、職務給、成果給、職能資格給などといった「賃金制度体系の問題」と理解されています。この問題については昨年12月下旬に シリーズで書かせて頂きました。
 これは、賃金の「人事管理の側面」ということが出来ます。いかなる賃金制度体系が従業員全体に最も理解され受け入れられやすいかという問題です

 もう一つの賃金問題は、企業経営の中で、賃金その他トータルの人件費として、「どれだけの支払いが可能か」という「総額人件費管理」の問題です。
 これは「賃金の企業経営の側面」ということが出来ます。人件費支払能力などともいわれますが、経営管理(コスト管理)の分野にも属し、 労働分配率が重要な指標です。

 企業の中でも、人事部・労務部などでは、望ましい人事管理に適応した賃金制度を作り、年々賃金水準を引き上げて、従業員に喜んで働いてもらいたいという思いから、人員構成から勤続・職務・成果などを積み上げて、「総額でこのくらいの原資が必要」といった「積み上げ式」の人件費計算をして予算を作ります。

 一方経営管理部門は、売上高、付加価値計算から、人件費と利益などの資本費の計画を立て、人件費はこのくらいの枠で経営計画に組込むべきといった経営見通し(経営計画)を立てます。

 この両者が巧く一致すればいいのですが、通常は人事サイドの積み上げ計算の方が大きい額になるのではないでしょうか。
 この問題は、人事(personnel)対財務(finance)の調整課題などと言われますが、春闘の時は、これらは一体の問題として取り組まなければなりません。

 もちろん、春闘の時は総額人件費の問題を中心に労使交渉で論じ、増えた原資(特にベア分)を賃金体系の中にいかに配分するか(賃金体系や手当制度の改定)は、春闘決着後、結構時間のかかる問題になる場合も少なくありません。
 
 今後春闘が定例化してくる時代を迎えて、この賃金における二側面を統合的に理解して取り組めるような、人事・財務双方を理解できる人材の育成が大事になるような気がします。