tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

インフレを正確に理解しましょう:3 永続的なインフレとは

2014年04月16日 20時24分53秒 | 経済
インフレを正確に理解しましょう:3 永続的なインフレとは
 政府・日銀が、年率2パーセントのインフレを経済運営の目標(インフレターゲット)にしていますが、これは一過性のインフレではありません。毎年コンスタントに2パーセント程度のインフレがあるという経済状態を目指しているのです。

 前々回見て来ましたように、消費税増税をしたり、円安にしたり、資源価格が高騰したりしても、それを毎年コンスタントに続けることは出来ません。全く別のインフレの原因がなければなりません。

 結論から言ってしまえばそれは「賃金コストプッシュインフレ」しかありません。賃金は日本経済のコストの7割強を占めていますから、賃金が上がればコストが上がり、コストが上がれば物価に転嫁されます。一方賃金が上がれば消費者の購買力も増えますから、多少物価が上がっても消費者は買ってくれます。

 「なんだ、賃金が2パーセント上がって、物価も2パーセント上がったのでは何の意味もない」ということになりそうですが、そこには生産性が上がるという前提があるのです。
 国全体の生産性(国民経済生産性)は働く人1人当たりの実質GDPです。2パーセント賃金が上がっても2パーセント生産性が上がればコストは上がりません。当然物価も上がりません。2パーセントの賃金上昇は、消費増税などがなければ、そのまま生活向上になるわけです。

 政府・日銀が目指しているのはこうした状態です。そして、デフレでもなく大幅インフレでもなく、2パーセントぐらいのインフレが、そうした状況を作り出すのに「一番適している」というが政府・日銀の認識だという事でしょう。

 しかし、こうした状況を「安定的に作り出す」のは、そう簡単なことではありません。どこの国でも労働組合は景気が良くなれば、より高い賃上げを要求します。原油価格が上がったりして一過性のインフレがあれば、その補填分だと言って、さらに高い賃上げを要求します。こうしてインフレ率はだんだん上がり(賃金と物価のスパイラル)、その国の国際競争力は弱まり、輸入品に負けます。
 「値上げは出来ない、コスト上がる」で企業利益がなくなり、雇用に影響が出るのが「スタグフレーション」です。かつて欧米主要国はこれで苦しみました

 日本の場合、労使は過去の経験に学び、合理的な賃金決定を踏み外さないように行動することが出来ます。はしゃいでいるのは政府ぐらいで、労使は賢明に、誤りない道を模索しています。これはこのブログが、日本経済はこれから伸びる(4月3日付)としている理由の1つでもあります。(次回は纏めです)