tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

企業物価、消費者物価の動きの示唆するもの

2013年12月19日 20時47分54秒 | 経済
企業物価、消費者物価の動きの示唆するもの
 未だあちこちに不安も残す景気回復ですが、前回までのシリーズで見て来ましたように、あとは生真面目に努力を続けることで日本経済の復活は必ずや実現できると考えています。
 
 この辺りを、最近の物価の動きから読み取ってみたいと思っているのが今回の基本テーマです。
 統計データで見れば、企業物価指数は最近時点、本年11月の速報で前年同月比でプラス2.7パーセントの上昇です。昨年度末までの前年比マイナスから明らかにプラスに転じています。 
 理由は中身を見れば明らかで、輸入物価の値上がりによるものです。4月の約20円の円安が大きく効いています。

 消費者物価の方は最近時点の10月で前年同月比0.1パーセントの上昇で、昨年度までのゼロ乃至マイナスから今年度に入ってゼロ乃至0.1~0.3パーセントのプラスといったところです。

 統計は現実を素直に表すもので、ここから読み取れるのは、円安による輸入物価の上昇は企業物価に反映しますが、消費者物価の場合は事情が多少複雑で、これら2つの物価統計の動きに差がでることが解ります。

 輸入原材料が加工されて消費者の手に届くまでには時間がかかるということもあるでしょうが、10月になってもほとんど影響が大きくならないというのはもう一つ構造的な原因があるからです。

 というのは、日本のGDPに対する輸入品の割合は10~15パーセントで、消費者物価を構成するコストの大部分(7割程度)は加工、流通、サービスといった段階の人件費です。従って、消費者物価の段階では円安の影響は、次第に薄められていくことになるのです。

 日本経済にはまだ「国際的に見て国内物価が高い」というデフレ要因が残っており、ホームメイドインフレは困難という状態で、賃金も上がっていないことから、消費者物価は殆ど上げられないし、上がらないという状況が続いていることが読み取れます。

 政府、日銀は2パーセントのインフレターゲットを標榜していて、賃上げで消費を増やし景気回復といっていますが、実はこれは見当違いの考え方だと私は思っています。
 円安で物価が上がった、利益も増えた、と言って賃上げすれば、結果はホームメイドインフレで、デフレ要因(日本の物価高)は直らないのです。
 未だに国際的に物価が高い日本は「もう少し(あと3~5円ぐらい?)円安にする」か「もう少しコストを下げる」かしないと、完全なデフレ脱却には行き着きません。

 さらに付け加えれば、今は、「賃上げより非正規中心に雇用の改善」に原資を使う要があると思います。
 もう1つ付け加えれば、わが国では名目賃金の上昇より、雇用の安定の方が消費拡大との相関が強いことは過去の統計を検証すれば明らかです。

 「賃上げ→消費」といった固定観念、思考停止に縛られず、現実経済の分析に基づいた「本当の日本経済の健全化」を学者も政治家も真剣に考えるべきでしょう。