tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

覇権国、基軸通貨国、アメリカの場合

2013年02月10日 13時46分23秒 | 経済
覇権国、基軸通貨国、アメリカの場合
 第二次大戦後のアメリカは素晴らしい指導力を持った良い国でした。巨大な資源と生産力を持ち、「バターも大砲も」と言われる経済力を持ち、原爆を擁して随一の軍事力を背景に、健全な指導理念と指導力を持っていました。

 経済面では、ブレトンウッズ体制(GATT,IMF体制)を掲げ、金本位、固定相場制で、各国の通貨価値の安定を図り(為替切下げ競争が戦争につながるという経験に立ち)世界経済の繁栄をリードしました。

 しかし「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり(平家物語)」ではありませんが、ベトナム戦争などで、経済力をすり減らし、強力な労働運動もあって、賃金インフレは昂進し、1970年代に入るころには、経常赤字国に転落、金準備は急速に減少、1971年、いわゆるニクソンショックで金兌換をやめたのです。

 何しろ、世界の基軸通貨の価値が漂流を始めたのです。ブレトンウッズ体制は崩壊、世界経済は混乱、そして、急速に変動相場制に移ることになりました。
 アメリカが普通の国であれば、ここでIMFの管理下に入り、黒字国に向けての再建計画をということになるのですが、覇権国、巨大な資源国でもあり、ドルに代わる基軸通貨も出てきません。

 ここからが、アメリカが他の国と違うところです。漂流するドルを基軸通貨とする、変則的な今の世界経済体制が始まることになりました。そこには、世界中から物を買ってくれるアメリカが不況になると、困るという世界の事情もありまあした。

 結局、アメリカは経常赤字を世界中からのファイナンス(借金)で埋め(経常収支の赤字を資本収支で埋め)られれば、経済的成り立つ、更には、アメリカが赤字なら、その分黒字の国もある(世界の収支尻を総括すればゼロサム)、その黒字をアメリカに還流させればいい、ということになり、黒字国の輸出に自粛を求めたり(日米貿易摩擦)、黒字国に米国債を売ったり、日本や中国に通貨価値の切上げを求めたり(プラザ合意)、サブプライムローンを組み込んだ証券を外国に売ったり、多様な手段をとることになりました。

 こうした、経常収支の赤字を資本収支の黒字で穴埋めするために発明された経済学が、マネー経済学、金融工学、国際会計基準の時価会計化などです。
 アメリカのこうした態度のせいで、経常赤字垂れ流しは良くないという健全な規範が緩んだかもしれません。しかしリーマンショックなどで結局は馬脚が表れ、アメリカの証券の信用は失墜し、今日に至っています。アメリカの資金調達は容易でなくなりました。

 重要な資金供給元であった日本も、大震災、原発問題と燃料転換、高齢化などで経常黒字は著しく減少、アメリカは自力再建を強いられることにありつつあります。
しかしアメリカは矢張り巨大な資源国です。膨大なシェールガス・オイルが発見されました。これがどう発展するのでしょうか。
 これらはすべて日本の円高、デフレとその逆転(円安)の可能性の将来と直接関係する現下の問題です。