tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

円安と企業の果たすべき役割

2013年01月25日 12時44分13秒 | 経済
円安と企業の果たすべき役割
 前回の最後の所で、「円安の恩恵を、この20年劣化を続けてきた日本社会の復元に使会うべきだ」という趣旨の事を書きました。この点を、企業が社会で果たすべき役割という視点から、もう少し敷衍したいと思います。まず、円高のおさらいです。

 円高とは日本の国内コストと価格が一律に「その分(円高の率)」上がるということです。グローバル化した社会では、一国の価格水準は、国際価格の水準にさや寄せしていきますから、円高で高くなった日本の物価は国際水準に向かって下がります。これが「デフレの正体」です。

 しかし、コストの7割ほどを占める人件費は、急には下がりません。例えばプラザ合意で2倍の円高になっても、賃金は「定昇維持」ということですぐには下がりません。しかし競争力のなくなった輸出商品は、輸出価格を引き下げざるを得ませんし、国内商品の価格も輸入品との競争で下がります。

 当然賃金も定昇ストップとか、ベースダウンでじりじり下がりますが、物価の下落の方が早いので、企業の利益は出なくなります。これが「円高デフレ不況」の正体です。
 賃金が下がらない分は人減らしで賃金コストを下げますが、日本では、正規従業員を非正規に置き換えることで平均賃金を下げました。これが「格差社会・就職氷河期の正体」です。

 まともな生活設計ができなくなる家庭が増え、家族の中で精神的・肉体的な問題の増加がみられる様になります。社会は歪み、犯罪や自殺も増ました。これが「社会の劣化の原因であり正体」です。

 こうしてプラザ合意(1985年)で2倍になった円高(物価高、コスト高)を国際水準に合わせるのに2002年までかかりました。これが「失われた20年の正体」です。
 こうした犠牲を土台に、日本経済は少し安定します。これが「いざなぎ越えの正体」です。もちろん劣化した社会の改善までには至りません。

 2007-2008年に、サブプライム・リーマンショックが起こり、また30パーセントを超える円高になりました。その後、ユーロ問題で円高の幅はさらに広がり日本経済・社会は「存亡の危機」に直面することになりました。

 事ここに至って、「なにかあると日本だけが円高を押し付けられ、犠牲を払うのはもう止めよう。国際投機資本による勝手な円高はもう容認しない。」と円高是正に取りかかったのが新政権です。
 さて、その緒戦の成果である約10パーセントの円安は、企業にとっては、10パーセントの生産性向上と同じです。さて、この突然の余裕を日本企業・日本社会はどう活用すべきでしょうか。その点への合理的なアプローチを考えようというのが次号からの課題です。

 という事になるのですが、まず大事なことは、また円高に戻って、元の木阿弥、捕らぬ狸の皮算用にならないように、政府が万全の方策を講じることでしょう。