tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

長期的視点を忘れた世界の論調

2011年10月15日 16時18分43秒 | 経済
長期的視点を忘れた世界の論調
 9月のアメリカの小売の伸びが予想より堅調だったということで、アメリカの株価が上昇しました。この株価の上昇には、ユーロ各国の金融援助のためのファンド(EFSF)の積み増しが、スロバキアの賛成で、最終的に可能になったので、ユーロにおける、いわゆるギリシャ危機がさし当たって遠退いたという思惑もあるとのことです。
 
 マスコミの報道や解説はそこ止まりで、それで本当に、アメリカ経済やユーロ問題が改善になるのかどうといったことには全く触れていません。
 確かに「株価」の問題ならば、今日上がって、明日はまた別の要因で大幅下落しても、それはそれで誰も文句は言わないでしょう。

 しかし今、多くの人が心配しているのは、日々の株価の上下も含めて、アメリカ経済が本当に立ち直るのか、ギリシャ問題は本当に解決できるのか、あちこちで囁かれている「こんなことをしていたら世界経済は大混乱、そして大恐慌に陥るのは必至」といった恐ろしい予想が、本当に現実になるのではないかといったことではないでしょうか。

 実態経済から見れば、アメリカの消費が増えるという事は、アメリカの生産性が上がり、国際競争力が強化され、アメリカの経常収支の赤字も財政赤字も縮小に向かって、アメリカ経済が自信を取り戻した結果でない限り、赤字の拡大から破局への道を急ぐことにしかなりません。

 ユーロ圏で、ギリシャ支援の資金が増えても、PIIGSに問題が飛び火しても、金融援助で破綻回避可能といっても、ソブリンリスクに晒されている国が国民経済そのものを建て直して、経常収支や財政を健全化する方向に進んでいることがハッキリするのでない限り、援助は穴の開いた水瓶に水を入れるようなもので、いくら資金を拠出しても足りないでしょう。

 バーナンキさんは前回の世界恐慌は金融支援をきちんとやれば、あんなことにはならなかったという研究歴の持ち主だそうですが、あくまでそれは、一時的対症療法で、それである程度の時間を稼いでいるうちに、各国経済の健全化を成し遂げなければならないという条件がついていたはずです。

 最近の世界経済の関係者の言動を見ていると、上記の後半部分が忘れられて、金融支援さえすれば、問題は解決されるような印象を受けることが大変多いような気がするのは私だけでしょうか。

 多くの人がそんな印象を受けるとすれば、アメリカを含む問題国が、自分たちの経済運営や、生活態度を見直して、自国経済の本格的建て直しをやらなければならないと自覚せずに、支援が足りないから生活が苦しいとか、もっと借金が出来るようにして欲しい、といったことに目が向き、街頭デモにくり出すといったことになるのではないでしょうか。

 そうした意味で、いわゆる識者の発言も、マスコミの論調も、なんでこんなに近視眼的 なものばかりになってしまったのか、大変恐ろしく感じるこの頃です。