tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

2種類の「金融」の峻別を  2

2011年10月28日 11時14分51秒 | 経済
2種類の「金融」の峻別を  2
 今回は、今日、「金融」と呼ばれている別の例を多少極端かもしれませんが挙げておきましょう。

 それは、いわゆる「空売り」です。最も極端な例は「ネイキッド ショート セリング」、裸空売りとでもいうべきでしょうか、売るべき何物も持たずに、勘定だけ売るという事のようです。

 アジア経済危機の時、インドネシアルピー、マレーシアリンギッド、タイバーツ、韓国ウォンなどが売りを浴びせられました。借金を抱え、信用基盤は弱いが育ち盛りの経済の元気で保っているような国の通貨を狙い撃ちして売りを浴びせたわけです。

 大手国際投機資本が売れば、矢張り信用基盤の弱さが表面化するのかと危険を感じる人や提灯をつけて一儲けしようという人も当然出ます。
 そうして、これらの通貨は暴落です。 再起不能といえるようになって安値で買い戻せば、投機資本は大もうけ、これらの国の経済は大打撃を受け、経済のみならず、政治的混乱まで誘発して、再起には数年から10年もかかるという悲劇が起こりました。
 マレーシアのマハティール首相が、これに対抗して為替制限をしたのは有名です。

 多分、ギリシャ国債や、ユーロについても同じようなことが起こったのでしょう。円の場合は、日本が万年黒字国で、信用基盤があるし、まだ円安になれば製造業が喜ぶという強さがありますから、時に仕掛ける投機筋もあるようですが、瀬踏み程度で「まだまだ」と考えているほうが主流のようですから、円高が続きます。

 これも「金融」という言葉で括られていますが、同じ金融でも前回の金融とは全く違うものでしょう。

 ヘッジという金融(信用)の機能に、レバレッジをかけて、(実際の取引以上の勘定に膨らませて)、実体経済に関係ない儲けのチャンスを狙うことから始まって異常な発展をしてきたこうしたマネーマーケットの特徴は何でしょうか。

① 金さえ儲かれば、実体経済やGDPがどうなろうと関係ない。
② 相場の変動が大きいほうがビジネスチャンスが大きい。
③  瞬間的な相場の上下に反応し、売買のチャンスを狙うので、常に近視眼的に考える。

  同じ「金融」といっても行動の原理が全く違います。これは金融というよりはっきりいってしまえば、「ギャンブル」そのものでしょう。国際投機資本の人たちが巨額の報酬を得ても、それは経済成長の配分ではなく、損をした人や儲けなかった人の負担(時に納税者の負担)でしかありません。すべてはゼロサムです。

 こうした2種類の「金融」を峻別するか、言葉自体を変えないといけないのではないでしょうか。