tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

単独介入と日本経済

2011年08月05日 15時14分53秒 | 国際経済
単独介入と日本経済
 国際投機筋の円の思惑買いで円レートは史上最高値の$1=¥76.25を更新しそうということで、日銀は思いきった単独介入に踏み切ったようです。単独介入の効果は限定的といった意見も多いようですが、日本が、とめどない円高に対して、はっきりとした意思表示をしたという事は大変有意義だと思います。

 マスコミなどの報道姿勢も変わってきました。この所は次第に円高に無関心ではなくなり、「歴史的円高」などという言葉も使われ始めました。
 リーマンショックで一気に$1=¥120から$1=¥80になった時、この円高は日本経済の致命傷 になりかねないとの危機感を持っていたら、もっと良かったのかもしれませんが、まだその頃は「マーケットは正しい」などという意識があったのでしょうか。

 今回は、$1=¥80から僅か3~4円の円高ですが、口や鼻まで水が来ていておぼれる寸前ですから、ほんの少し水位が上がっても、いよいよ大変という事かもしれません。
 特に今回、日本は大震災に見舞われ、原発問題が起こり、災害からの復旧資金、東京電力の賠償金の負担も含めて巨大な財政支出を必要としています。国債発行か増税かでもめていますが、結局はこれらはすべて国民が負担することになるわけですから、日本は黒字国だからデフォルトは心配ないともいってもいられない状況です。

 それでも今、円高が進むという事は、
「日本政府は国民に耐乏生活を求め、国民はそれにしたがって、生活を切り詰め、国債を買うか、増税を認めるかできちんと対応し、必要な資金は国民が自分で出す。アメリカのように赤字国になって外国からのカネをあてにしたり、どこかの国のように増税反対の暴動などはしない。だから円を買っておけば、安心なのだ、というのが、いわゆる「消去法による円高」という事の意味なのです。

 日本人の真面目さを逆手にとって、収益を確保しようと為替売買をする国際投機資本の行動原理を「黙認しない」という意思表示が、今回の単独介入の最大の意味だと思います。

 マスコミなどの円高解説 も、「円高で輸出産業は打撃だが、海外旅行や輸入品は安くなってメリットもある」などというのはやめて、「海外旅行や輸入品が有利になれば、国内旅行や国産品はその分売れなくなり、国内の仕事は減って、雇用も賃金も減ることになり、何もいいことはない。」とはっきり書いたらどうでしょうか。

 世界経済がこうした事になってしまったのも、基軸通貨国が万年赤字で、金融操作でそれを穴埋めして景気を維持し、世界がそれに頼る、といった歪んだ世界経済を作り、赤字国が居直って、黒字国が、助けるのが当然といった雰囲気を作ってしまったことによるのです。
 真に問われるのはアメリカの対応です。