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アメリカ経済再建 その3: 実体経済の反撃

2011年08月18日 11時10分34秒 | 経済
アメリカ経済再建 その3: 実体経済の反撃
 前回の問題を金融面から見てみましょう。
 デフレでもないときに、ゼロ金利、超金融緩和にするという事はどういうことでしょうか。
 ドル安の時にはデフレは起きません。だから金利もゼロにはなりません。起こるとすればインフレです。事実、アメリカの物価は基本的には上がり続けていますし、アメリカの長期金利は上昇しようとしているようです。

 金利上昇はアメリカ国債価格の下落をもたらします。アメリカだけではなく、米国債を持っている世界中の金融機関が、大変な損失を抱えることになります。
 国債価格を維持したいアメリカ政府にとって、金利上昇は禁物です。ということで経済原則に逆らったゼロ金利政策が採られるのでしょう。

 こんなおかしなことになってしまうのも、万年経常赤字のアメリカが、経済実体を無視してドルの価値を維持することを続けようとするからです。 実体経済と金融の関係を異常なものにするような政策をとり、それを可能にするための、会計基準をはじめとしたデファクト・スタンダードを作り国際的に広めて、何とか辻褄を合わせようというのでしょうか。

 例えば、保守主義の会計では「所得」は基本的に「インカムゲイン」、評価は時価ではなく取得価格と考えられていたのではないでしょうか。
 アメリカは経常赤字を資本収支の黒字で補わなければならないことから、「インカムゲイン」も「キャピタルゲイン」も同じ「ゲイン」としてできるだけ区別しない、そして評価は時価といったような会計を考えたようです。

 このブログで書いてきた「インカムゲイン=額に汗した金」と「キャピタルゲイン=あぶく銭」は峻別すべきだという「実体経済中心」の考え方とは全く別物です。
 その結果、アメリカは、金利上昇、国債価格下落で生じる「キャピタルロス」の恐怖に苛まれることになったといえるのではないでしょうか。

 そのプロセスでアメリカにキャピタルゲインをもたらすために育ってきた「マネー資本主義」のモンスターたちが、次々と破綻し、世界中に経済混乱のタネを蒔き散らしているのです。

 しかも時代は、グローバル化の時代です。経済の最も基本部分をなす「実体経済の競争力」の劣化が否応なしにアメリカを追い込みます。
 いまや、アメリカの「落ちた競争力」はドル安でしかカバーできないのでしょうが、そのドル安は、アメリカ国債の価値の維持に対しては正反対の効果を持つことになるのです。

 経済を金融で解決しようと考えたアメリカは、今や、実体経済の反撃を受けて、進退窮まってしまった、というのが本当のところでしょう。