tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

成長経済回帰への具体策 その1

2010年05月17日 16時18分12秒 | 経済
成長経済回帰への具体策 その1
 前回、成長経済を取り戻す方法の基本線について書きました。「理屈はそうかもしれないが、どうやってやるの?」というご意見もあろうかと思いますので、具体的方法論を検討し行きたいと思います。

 最初の命題は、「GDPを使いきること」です。今年度の『政府経済見通し』を見てみましょう。平成21年度のGDPの実績見込みは473.1兆円、22年度の見込みは475.2兆円で、名目成長率0.4パーセント、実質成長率は1.4パーセント(GDPデフレーター、つまり物価上昇率がマイナス1.0パーセントで、1パーセントのデフレ経済を予想しています。

 何故、デフレから抜けられないのかといいますと、経常収支黒字15.8兆円(GDP比3.3パーセント)という見通しで、折角のGDPを3パーセント以上も使い残すことになっています。円は最も堅実な通貨であり続け、平均円レートは$1=¥89.1で、円高が進む見通しです。

 政府経済見通しは、今までの縮小均衡・デフレ路線の延長そのものです。これでは日本経済に救いはありません。
 ここでの提言は、GDPの中で使い残す予定の15.8兆円を、国民(家計)の協力を得て、全額消費の拡大に向けることです。それができれば、民間消費支出と住宅投資の合計が、政府見通しの296.6兆円から312.4兆円に増え、国内民間需要が5.4パーセント増えます。

 単純計算ですから、ピッタリ正確とは行きませんが、ほぼそんな形でしょう。経常収支はプラマイ・ゼロ。多分円高傾向は止まり、GDPデフレーターはゼロ近傍、デフレはなくなるという見通しに変わります。日本経済は、ようやく内需中心に舵を切れたことになります。

 経常黒字が国内民間需要に切り替わったことの経済効果は、金利水準と付加価値率の差だけGDPを拡大させますから、経済成長は政府見通しより大きくなることになります。

 問題は、どうやって国民(家計)にお金を使ってもらうかです。政府の知恵の出しどころでしょう。この問題は、経済学の問題ではありません。社会学の問題であり、政治学の問題です。
 国民に健全にカネを使ってもらう、このブログでも触れましたように、エコカー減税やエコポイント もそのための方法としてかなり効果を上げたようです。

 しかし本当に大事なことは、「日本の場合、今の国際経済情勢の中では、GDPを使い残さないことが、成長経済への復帰のためにどうしても必要なのだ」という理解と認識を、国民が共有することでしょう。