tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

赤字財政と租税弾性値

2010年03月11日 10時21分20秒 | 経済
赤字財政と租税弾性値
 租税弾性値という概念があります。経済成長(名目)が1パーセントだった時、政府の税収が何パーセント増えるかを「弾性値」として出したものです。

 例えば、経済成長1.0パーセントにつき、税収が1.2パーセント増えるというのであれば、「租税弾性値」は1.2 ということで、経験的には、経済が正常な発展をしているときには、租税弾性値は1.1とか1.2とかで政府は経済見通しを考えていました。
 
 税金の中の大きなものを考えてみますと、
・サラリーマンなどの所得税は、雇用量と賃金水準で決まり、累進課税ですから賃金が上がるよりも多少余計に上がります。租税弾性値は通常1.0より少し大きくなります。
・法人税などは、企業の利益に比例します。企業の利益というのは経済成長が順調で景気がよければ大幅に増え、逆に経済が減速すると大幅に減ったりマイナスになったりします。ですから租税弾性値は大きくぶれて、税収予想は難しくなります。政府の財政は景気に振り回されます。特に長期不況の時は大変です
・一番安定的なのは消費税で、これは現在消費の5パーセントですから、通常は、ほほ消費と同じ伸びで租税弾性値は1.0から大きくはズレないでしょう。

 ということで、高度成長期は法人税重視にすれば、税収は順調に増えて、政府の財政は健全です。しかし、低成長で減収減益が多くなると、法人税は急減するので、政府としては、安定した税収が見込める所得税や消費税、特に最も安定した消費税が好ましくなります。

 不況続きの中で、現政権は、消費税増税を封印していますから、法人税が激減する中で、その分の財源を国債発行で補填しなければならないという事になるのは当然です。来年度は税収より国債発行額の方が大きいのはご存知の通りです

 国債発行や財政支出の組み換え(仕分け作業)で、景気をてこ入れし、景気をよくすれば法人税収も増えるという良い循環になるのを願ってのことでしょうが、財政支援(ケインズ政策)も現状程度では力不足という意見が大勢です。
 といってさらに大きく国債発行を増やすのは反対、というのが、政府をはじめ財政再建を願う大多数の人の意見でしょう。

 増税は出来ない、国債増発もダメ、それでも景気梃入れはしたい。気持ちは解るが、これでは八方塞がりです。カネより頭を使った経済政策 といっても、現状は、エコカー減税、補助金、それにエコポイント程度です。かなり効果はあるようですが、まだまだ足りません。
 どうしたら「日本経済の正常な形」(前回)が実現できるのでしょうか。