tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

「戦争で景気回復」論議とケインズ政策

2009年08月09日 14時42分50秒 | 経済
「戦争で景気回復」論議とケインズ政策
 不況が長くなると、今でも、戦争でも始まれば景気が回復するんじゃないか、などという不謹慎な発言が聞かれることがあります。
 戦争というのは、飛行機や軍艦や戦車や大砲を作り、作ったはじから破壊してしまう活動で、尊い人命(社会経済学的には人材)も失われる無駄と損失の極致の様なものですから、本来そんなことはあってはならない事なのでしょう。

 よその国の戦争で、武器輸出などで儲ける、ということはありえましょうが、それも人類全体で考えれば、損失であることは明らかです。

 ただ、単純に経済の面からいえば、破壊のためとはいえ、必死になってモノやサービスを作る状態は、生産を増やし、フローとしての付加価値は一時的に増えることになりましょう。ただし富は蓄積されず、資本は減耗・毀損するだけですからフローの拡大も長続きしません。太平洋戦争の日本の場合は典型的です。

 戦争でなくて同じような生産増大の効果をもたらそうというのがケインズ政策でしょう。政府の力で生産を増やせば、フロー(GDP)拡大の効果はあります。極端な例としてよく言われるように「穴を掘って、別の穴を掘った土でそれを埋めても」GDPは増えるわけです。

 利用されない港湾、空港、道路を作るというのもそれに似たものでしょう。その時点でのGDPは増えますが、それがその後のGDPを増やすといいう投資効果はありません。
 ピラミッドも公共工事だったという説がありますが、数千年を経て、世界的な観光資源となって、エジプトのGDPを増やしているとすれば、投資効果はあったことになります。

 問題は、こうしたいわば「力ずく」で生産(労働力と資本フロ-)を増やしても、その結果が有効で利用しやすい資本の蓄積にならなければ、「力ずく」が終われば、経済の活性化も終わるということです。

 戦争は問題外ですが、ケインズ政策が意味を持つとすれば、財政支出の結果の生産物(インフラ、技術開発などなど)が人々に多く利用され、新たな経済活動を刺激するものでなくてはなりません。

 これは人々が、自発的に経済活動を活発にするように仕向けることで、人間が活発に動くこと(働くこと)が経済活性化の中心でしょう。人が動かなくては経済は活性化しません。もちろんこれは、必ずしも汗水たらして働くことではありません。楽して楽しく活発な経済活動が出来るかどうかは、 技術開発と資本設備のあり方によります。