tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

失業率5.7パーセントに

2009年08月29日 14時47分30秒 | 経営
失業率5.7パーセントに
 今年(2009)の7月の失業率が過去最高を突破し5.7パーセントになりました。
 過去の最高値は2002~2003年5.5パーセントを3回ほど記録していますが、日本的雇用慣行、労使慣行の中では、5.5パーセントを越えることはおそらくないのではないかといった感じを持っていた人も多いのではないかと思います。

 しかし、今回は、一気に0.2%ポイントも高い5.7パーセントを記録してしまいました。これでは場合によっては更に高まることも予想されるような状況かもしれません。
 世界に冠たる日本的経営の基底として日本の経営者が持っていた、雇用に対する伝統的感覚 、「雇用を大切にすることが経営者の重要な使命である」という極めて人間的、人間重視の感覚が欧米並みに麻痺してきたのでしょうか。これは恐ろしいことです。

 かつて日本の経営者は「欧米のように、首を切った企業の株価が上がるような感覚は日本にはありえない」といっていました。これには経営というものに対する長期の視点と人間に対する深い洞察があったからです。
 首切りによる人件費の節減でいくばくかの利益が回復しても、それは社内の人心の荒廃をもたらし、企業内の結束力、人間の凝集力を損ない、企業における最大の経営資源である人的資源の充実蓄積に大きなマイナスをもたらし、企業の発展力を損なうというのが日本企業の共通の認識でした。

 確かに今日、企業経営は厳しい状態にありましょう。しかし見方によっては、最近ではアジア経済に回復の兆しが見え、日本の株価も上昇のトレンドを示しています。みんなで協力し、もう一息耐えて頑張れば、何とかなりそうな気配が見えてきているのではないでしょうか。
 にも拘らず、ここに来て失業率が史上最高を記録するに至ったのは、日本の経営者の中に短期的な利益に拘泥し、雇用に対する倫理感の希薄化、ひいては企業経営における長期的視点の喪失があるように思われてなりません。

 日経連会長から日本経団連の初代会長になった奥田碩氏は「首を切る経営者は腹を切れ」といわれました。今経営者の総本山である日本経団連はなんというのでしょうか。

  こうした経営者の気概の衰退は、日本の企業経営の活性化、日本経済の回復の底力を、確実に弱めていることに早く気がつかなければならないのではないでしょうか。
 苦しかったら「共に手を携えて頑張る」という伝統的思考方法への回帰が早いことを望むばかりです。