tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

「キャピタルゲイン」と「インカムゲイン」

2008年04月25日 11時20分39秒 | 経営
「キャピタルゲイン」と「インカムゲイン」
 キャピタルゲインは資本利得などと訳されています。株や土地、商品など、投機対象になるものを買って、値上がりして売った時の儲けのことです。損すればキャピタルロスといいます。
 インカムゲインは和製英語のようで、適切な訳語が見つかりません。こちらは投資対象の値上がりではなくて、投資の見返りとしての金利、配当、地代、家賃などの所得をさします。不労所得(unearned income)というのはこれらの所得のことですが、不労所得は、時にキャピタルゲインも含んで使われるので、適切な訳語になりません。

 この2つのゲイン(gain=利得/所得)の基本的な違いは、次のようなところにあります。
  ・キャピタルゲインでいくら儲けても「実質の生産」(実質GDPなどの「実質付加価値生産」=人間が活用出来る「富」、「豊かさ」)の量には関係ありません。儲けた人のところに富/豊かさが「移転」するだけです。
  ・インカムゲインの方は、付加価値(当ブログ「付加価値の正確な理解を 」2008年3月参照)の分配ですから、その投資によって得られた「実質の生産の増加」(GDP,付加価値の増加)の分け前、つまり人間が活用できる「豊かさ」が投資によって増えた分の中からの分配です。

 たとえば、今、原油が値上がりしています。儲けているのは投機資本や産油国だとすれば、「実質世界総生産」は変わらないのですから、石油を消費する人の富(実質購買力)が「値上がり」という形で、儲けている人たちの懐に移転しているだけということです。

 日本でもかつて「土地バブル」がありました。地価上昇で儲かったお金はキャピタルゲインです。地価が上がっても日本の実質GDPが増えるわけではありません。つまりあの時は、サラリーマンが汗水たらして働いた月給の実質価値が、土地や住宅の取得の際に都市近郊農家など土地所有者ににどんどん移転して行ったということです。「道理で給料は上がっても俺の生活は苦しくて、地主はお金持ちだったよな」と実感される方は多いでしょう。

 お金の働きによって、キャピタルゲインもインカムゲインも生まれます。懐に入れば、どちらのお金も同じに使えます。
 ところで、最近、アメリカなどの首唱によって、「儲かりさえすれば、どっちだっていいじゃないか」といった風潮が一般的になっています。しかし、どちらの「ゲイン」(利得/所得)が本来、人間全体の幸せに適ったものなのか、よくよく考えなければいけないのではないでしょうか。