tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

中国:インフレの進行と人民元上昇

2008年04月11日 14時28分56秒 | 経済
中国:インフレの進行と人民元上昇
 
 北京オリンピックと上海万博に向けて疾走する中国ですが、スムーズに行ってくれるでしょうか。政治的な面にはあえて触れませんが、国内における急激な格差の拡大が不満を生み、内陸地域の最低賃金の大幅上昇などの手が打たれたことは、このブログでもすでに触れました。こうした動きに触発された(?)賃金上昇のせいもあり、中国経済は年率6~8パーセントのインフレ基調になってきています。

 一方、今日の新聞では、人民元の対ドルレートが上昇し、1ドル6人民元台に突入というニュースが流れました。中国政府は、人民元の上昇にはかなり厳しく対応しているように感じられますが、折に触れての米・欧からの圧力、それに米欧に本拠を置く巨大化した各種のファンドも含め、国際金融取引のプレーヤーズの活動の中で、人民元がじりじりと上昇してしまうといった動きへの抵抗はなかなか難しいようです。

 マスコミの解説の中には、インフレ基調の中国の場合には、人民元を高くすることでインフレ抑制の効果もあるから、そうしたメリットを中国も考えているのではないか、などといったものもありますが、それは中国経済へのダブルパンチになるでしょう。

 折しも労働法の改正などで、中国の人件費コストは制度的にも上昇必至です。それが生産性上昇で吸収しきれずにインフレになっているのに加えて、人民元高にすれば、これは更なる中国のコストと物価の一律上昇になって、中国の国際競争力をいっそう弱めることになります。すでに、先進国からの中国進出企業が、ベトナムやタイに脱出を図るといった報道も多く聞かれます。

 アメリカが不況になっては困るというのが世界の論調ですが、中国経済がおかしくなっても世界は困るでしょう。基本は中国自身がどう考えているかですし、現状程度のコスト高ならば、中国には乗り切る力が十分あるのかもしれません。中国の政治力を考えれば、日本に対するプラザ合意のようなこと(1985年、G5で日本は円の大幅切り上げを迫られ、その後2年で円は2倍に切り上げられて、製造業の空洞化、ひいては”失われた10年”につながった)にはならないでしょうが、これから先、十分注意して見ていく必要がありそうです。