tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

全 固体電池の開発競争を勝ち抜け

2022年02月21日 16時19分09秒 | 科学技術

長期不況の末期2012年に「蓄電技術で世界制覇を」を書きました。この長い深刻な不況脱出のために、起死回生の技術にもなりそうな蓄電技術について応援するために書いておこうと思ったからです。

その後、日本の関連企業は本当に頑張ったようです。
そして時代は変わり、自動車のエンジンがモーターに代わるEVの幕開けの時代に入って来ました。蓄電技術の高度化は、まさに決定的に重要になって来ました。

今世界に名をはせているイーロン・マスク氏率いるテスラの車は、当初からパナソニックの蓄電池で走っていたことは知られています。

そして今蓄電池は、電解液という液体を使う電池から「全固体電池」の時代に入ってこようとしています。

先ず本命は,リチュウムイオン電池の全固体化のようですが、すでに電池産業だけでなく自動車産業をはじめ、多くのスタートアップも含めて熾烈な開発競争が展開されています。

欧米は勿論、アジアでは、韓国も総力を挙げているようで、また玉石混交のようですが、原材料分野も含め、中国も本気で力を入れているようです。

世界はどんな状態なのかとネットで見ましたら、全固体電池関連の特許の出願件数のランキング(「全固体電池特許ランキング」で検索)がありました。

トップは韓国のサムスンでした、2位がパナソニックIP、3位がLG、4位がトヨタ、5位ボッシュ、6位から日立、ソニー、NEC、日産自動車、東芝 でベストテンという事です(2000~2018年計)。
中国は入っていません。事情は解りませんが、ニュースでは中国も航続距離の長いEVを出していることが報道されています。

全固体電池は、火災を起こしにくい点が最も優れていることは勿論、出力が大きくなり形状はコンパクトなど種々の利点を生かすべく、先ずはリチウムイオン電池の全固体化という事のようですが、欠点としては、リチウムやコバルトといったレアメアタルを使うという点だそうです。

レアメタルはその名の通り希少資源で、産地も限られているという事ですし、精錬工程が中国に集中しているようで、種々問題なしとしないようで、トヨタはナトリウムイオン電池の開発にも注力しているようです。

偶々今日の日経産業新聞が報じていたのは、日本電気硝子がレアメタル不使用のナトリウムイオン電池を開発、実用化を急いでいるという情報です。

ナトリウムイオン電池の電極に長年培ったガラスとその技術を使用することから、高価なレアメタルを 使わずに全固体電池の開発に成功して実用化を急いでいるという事で、こうした従来の事業で培った高い技術を新分野に活用して、会社の中身が蛻変して進化発展を遂げるというのは日本企業の特色(多くの繊維企業の変身、このブログでも取り上げた富士フイルムの例など枚挙に暇がない)ではないでしょうか。

電池の性能向上は今後ますます必要になる電気エネルギーの貯蔵問題の中でも最も身近なものですから、その中で全固体電池という安全で高出力の電池の開発競争はますます熾烈化するでしょう。

改めて、日本企業の頑張りに期待するとともに、これまで手を抜いてきた日本の技術開発政策を韓国、中国に負けないものにする努力を岸田政権に強く要望するところです。


自然科学の学術論文:中国躍進、日本は低迷

2021年08月13日 21時11分22秒 | 科学技術
皆様ご承知のように、文部科学省の科学技術・学術政策研究所は、毎年世界の学術論文の数と質の調査をしています。

過日、自然科学の分野についての調査について過去3年分の学術論文についての調査を発表しています。

マスコミでは中国がアメリカを抜いて数でも質でもトップになったことを報じていましたが、残念ながら、日本の状況は、このところ低迷を続けているようです。

前回発表の2016-2018の3年間の調査では、中国が論文数でトップになったことが報じられましたが、今回の調査では論文の質についても中国がトップになったことが明らかになりました。

今回発表の過去3年の年平均の論文数は
中35万3千、米28万6千、独6万8千、日本6万3千
昨年発表された2016-2018の3年間の調査でも
中30万5千、米28万1千、独6万8千、日6万5千
で、中国がトップでしたが、今回は質でも中国がトップになってます。

論文の質というのは、どれだけその論文が他の論文で引用されたか(注目された)で、引用された回数の順位という事ですが、それを見ますと
中4万2千、米3万7千、英9千、独7千、・・・・印4千、日3700
で、中国トップ、日本は10位ということになっています。

因みに1995-1997年の調査では(これ以降の数字は自然科学だけでなく全分野です)、
論文数:1位アメリカ、2位日本、以下英、独、仏
論文の質:1位アメリカ、以下英、独、日、仏
で、日本の存在感はかなりのものだったと言えそうです。

その後の様子を見ますと
2005-2007年調査、論文数6位、論文の質7位
2015- 2017年調査、論文数11位、論文の質12位
という事になっています。

自然科学の場合は全分野より成績はいいようでもありますが、残念ながら、そんなことを言っていられないように量、質ともに後退が顕著です。

そうなると、矢張り気になるのは「何故そうなったか」でしょう。
きちんとした答えを出すのは難しいと思います。しかし、これは絶対関係があると言えるのは、プラザ合意によってもたらされた円高による長期不況でしょう。30年もほとんど経済成長がない経済では民間にも政府にも、経済的余裕はなくなります。

今日の研究開発というのは、巨大な時間の設備(カネ)がかかります。ワクチンもそうでしょう。政府が予算を組んで大学、研究機関、企業などを積極的に援助しなかれば、特に基礎研究などの研究などは遅れざるを得ません。

この辺りはこのブログでも折に触れて書いているのでこれ以上触れませんが、プラザ合意を含めて政府の失政が大きく影響していると思うところです。

次期政権には、ぜひ方向転換をお願いしたいと思います。それが明日の日本を決めるでしょうから。

ミニ原子力発電開発の怪

2021年05月10日 20時08分59秒 | 科学技術
ミニ原子力発電開発の怪
 地球温暖化を何とか食い止めよという事で脱炭素社会に向かって邁進する人類社会ですが、その中で、原子力利用の検討は続いているようです。

 アメリカがこの面でも最先端を行っているようですが、考えられているのはミニ原発のようです。
 今までの様な大型の原発では事故が起きると大変なことになるわけで、例としてはチェルノブイリと福島第一原発が引き合いに出されます。

 原発というのは、核分裂の時に出る熱を利用してお湯を沸かしその蒸気で発電する(沸騰水型)ので、核燃料から発生する熱をコントロールするのに大量の冷却水が必要です。ですから河か海のそばでないと立地できないようですが、福島の場合は津波ですべての電源ストップ、冷却水が注入出来なくなって原子炉がその熱で溶けて(炉心溶融)大惨事につながったわけす。

 ということで原子炉を小さくすれば、冷却水も少なくて事故の際も安全といったメリットがあり、どこにでも簡単に設置でき、電力が沢山必要なら、何基か組合わせれば済むので、安全で使い勝手がよく、都市の中でも設置可能などといった利点があるという理由のようです。
 
 原子力産業が生き延びようとすればそうした発想になるのでしょうが、素人の私が聞いても、問題が沢山あるような気がします。

 例えば冷却水が少なくて済むと言っても、物理学的には(技術レベルが同じであれば)発電量と冷却水の量は比例的なはずですから、たくさん発電すれば冷却水も沢山いるはずですし、一方、発電のロットが小さくなればなるほど、原発の製造コスト運転コストは割高になるはずです。
 大型原発で安全装置を徹底する場合とコストパフォーマンスはどうなのでしょうか。

 更に問題なのは核分裂を利用する限り、使用済み核燃料は、発電量に比例して増えます。小規模の方が非効率の可能性も考えられます。

 今問題になっているのは「オンカロ」に象徴されるように、また日本でいわれますように、「トイレのないマンション」にきちんとしてたトイレを作るコストを考えたら、原発の電力料金は一体どこまで上がるのかといった問題は一向に考慮されていないという事でしょう。

 地球の人口は、未だ増えるのでしょうが、太陽が無償で与えてくれる膨大な自然エネルギーを、人類の知恵で有効に活用すれば、地球環境を汚染するようなエネルギーを使わずとも、人類は十分なエネルギーを得られるでしょうし、結局その方が安価で安全でしょう。

 それこそがSDGsの実践、人類社会の安定発展への王道であり、近道ではないでしょうか。

只今午前11時10分前です

2021年05月09日 11時12分43秒 | 科学技術
只今午前11時10分前です
 まず現在の時刻を書いたのは、中国のロケット「長征」の残骸が今日の11前後に地表に落下する可能性があるというアメリカ軍の発表があるからです。

 中国は、地表に達する前に燃え尽きるので、地表に落下する可能性は「極めて少ない」といっています。
 極めて少ないという言い回しは微妙ですが、いずれにしてもここ1時間程度で、結果は解るのです。

 落下場所の予想はニュージーランド沖から北大西洋、現在は地中海ギリシャ沖と目まぐるしく変わりますが、落下する場所によって大変な災害になる可能性もあります。

 まだ落下の報道はありませんが、今後、宇宙に打ち上げるものも巨大になる可能性が大きいわけですから、安易な宇宙開発には超大国中心に十分注意しいものです。

 これも人間の欲と愚かさが試されているという事なのかもしれませんね。

科学技術開発後進国にならないために

2021年03月25日 20時03分18秒 | 科学技術
科学技術開発後進国にならないために
 先に日本はワクチン後進国になったことを見てきました。これはコロナ対策についていて見ていくいく中で気づかされたところです。
 まず気になるのは、政府がハナから自主開発という考えを持っていないことでした。海外から購入する契約にしか関心がなかったようです。

 所で、政府関係者の国会答弁などは、ほとんどが官僚が書いているという事は広く知られていますが、この度ニュースになった、官僚が僚が作ったであろう法案に数多くのミスがあったという事です。
 官僚の質が急に落ちたとは考えにくいので、一般的な人事管理の理論を応用しますと、官僚がやる気をなくしているという事になりそうです。

 企業では、こういう時は、トップのリーダーシップの欠如や人事政策の失敗であることが多いのですが、最近、官僚の人事を官邸が握っていると言われ、選ばれて出世した官僚の虚偽答弁や不行跡が国会でも年中取り上げられています。
 やっぱり何かおかしいと感じる人も多いでしょう。どうも政府の人事管理の失敗のように見えてきます。

 人間の仕事の仕方につきましては、マズローは欲求5段解説を書き、ハーツバーグは動機づけ理論を提唱しました。
 人事管理の専門家の意見では、従業員がやる気を持っている場合と、やる気を失っている場合と比べれば、生産性に2~5倍の差が生まれるという説もあります。

 さて、ここからが本題ですが、日本の科学技術開発はここ何年来韓国や中国に追い上げられています。どうもワクチンだけではないようです。
 考えてみれば、「もんじゅ」の失敗から、原発メルトダウンの処理まで、エネルギー政策という最重要な分野でも、政策の方向がはっきりしません。また身近なマイナンバーカードに関わる行政のデジタル化でも、リーダーが本格的な利用についてどこまで本当に考えているのか解らないように思われることも少なくないようです。

 更に統計を見ますと、日本の科学技術開発は、結構大きな金(米、中、EUに続いて4番目)を使っていますし、研究者の数も多い(中国、米国についで3番目)です。ただ、特徴的なのは科学技術開発への政府の投資が主要国に比べると少ないこと、そして最も目につくのは研究開発投資額がほとんど増えていないという事です。

最近10年間の研究開発費の伸び率(2007~2017)
    中国  4.8倍
    韓国  2.5倍
    米国  1.4倍
    日本  1.0倍  
資料:」科学科学科学技術・+政策研究所

 つまり、カネも人も注ぎ込んでいるのですが、政府の基本方針がはっきりしないので、研究機関も民間も何をやったらいいのか解らないこともあるでしょうか、その結果、研究開発の効率が悪くなっているという事のように感じられてなりません。

 結局、コロナでも原発問題でも、後追いや後始末の方に金も人もかかって、結果的に効率は大変悪くなっているという事ではないでしょうか。

 日本政府が、科学技術立国を改めて旗印に掲げ、時代を先取りするような明確な目標を打ち出し、人間もカネも生きて使われるような政策を明示し、後追いでなく前向きな科学技術開発のために、積極的に予算をつけ、研究機関や大学、企業などがその気になるようなリーダーシップを持てるかどうかがカギになるような気がしています。

 そのためには、まず政府が、国民の声を十分に聴き、国民の願望が生きるような説得力と納得性のある基本方針を明示し、国民に明日の希望を与えることが必要なようです。
 今の、アメリカ一辺倒の政府に、それだけの力量があるか、先ずは国民に気力だけでも見せてほしいものです。

アストラゼネカ、日本でワクチン製造へ

2021年01月28日 18時02分00秒 | 科学技術
アストラゼネカ、日本でワクチン製造へ
 新型コロナ克服の決め手になるかと期待されているワクチンについての朗報が飛び込んで来ました。

 英国のアストラゼネカ社と日本政府は1億2000万回分のワクチン供給の契約を結んでいましたが、このほど、その内、まず3000万回分を3月までに輸入することが決まり、後の9000万回分を日本で製造することになったという事です。

 日本のワクチン産業については、日本政府そのものが全く考えも態度も表明したこともなく、すべては輸入枠確保の努力しか言っていなかったので、この報道は驚きでした。

 もちろん、アストラゼネカは東京に支社があり、アストラゼネカジャパンという日本法人もあり、今回の主役はそこでしょうが、実際にワクチンの製造をするのはアストラゼネカからの委託を受けた日本の中小医薬品メーカーです。

 ネットで見ましたらその会社は、兵庫県芦屋のJCRファーマという会社で、アストラゼネカから製造の打診をされ、トップ以下全社一丸でやる気がひしひし窺われるところです。

 ワクチンのもとになる生きたウィルスをアストラゼネカが供給し、それをJCRファーマが大量に培養してワクチンにまで仕上げるという仕事で、アストラゼネカの田中執行役員は、「JCRファーマの能力の高さを認めたので」といい、JCRファーマの芦田会長は「初めは断りましたが、遺伝子治療をやっているチームがあって、出来ないことは無いじゃないかというので引き受けました」「失敗できないと感じています。しかし、こういう時に作れと言われたら作るのが使命かもしれない」とのことです。

 同社研究本部の岡本さんは「我々の技術があったらできるなと。(製造)テストでは思っていた以上に順調に進めることができました」とのことです。(以上MBSnewsより)

加藤官房長官は、今日の記者会見で、「ワクチンの生産設備を整備する厚生労働省の補助制度への申請を27日に行った」と説明し「ワクチンを国内で生産できる体制を確立することは大変重要だ。パンデミックに備えて生産体制の整備をしっかりと進めていく」と言ったようです。

 何事も後追いになっている現政権ですが、出来れば1年前、遅くとも半年前に、その言葉を聞きたかったと思う人は少なくないのではないでしょうか。

 これが刺激になって、日本でもコロナワクチンの国内開発、国内生産が進むのでしょうか、それとも、これまでのような状態が続くのでしょうか。今後の業界の動きは、政府の方針と、力の入れ方次第のような気がするところです。

 

    

インドの3億人ワクチン接種計画に驚嘆

2021年01月25日 20時42分40秒 | 科学技術
インドの3億人ワクチン接種計画に驚嘆
 世界的製薬大国である事はあまり知られていないインドですが、この夏までに、3億人に新型コロナ・ワクチンを接種するとモディ首相が発表しました。

 いまやアメリカに次ぐ新型コロナ感染国になって心配されていたインドですが、この発表には度肝を抜かれた方も多いのではないかと思います。

 インドは、IT 技術では、世界に冠たる実績で知らますが、製薬大国の側面は、それほど有名ではありませんでした。
 今回の報道では「世界の薬局」などという見出しもありますが、私もインドの製薬業界の企業規模と収益力については、かつて驚かされた経験があります。

 現役の頃、たまたま知り合って一緒に仕事をしたインド人で、インドの外資系製薬会社の役員で、コンサルタントもやっていた友人がいまして、彼が私どもの使っていた経営分析手法が面白いというので、インドの製薬会社10社のデータをそれに当てはめて作って見せてくれたのです。

 いつも、「インドにはどんな薬でもあるよ」などと冗談を言っていましたが、「こんなデータ出してもいいの?」と聞きましたら、「上場企業の公表データだから問題ない」とのことでした。

 拝見しますと、規模が大きいだけでなく、その収益率の高さはまさに驚嘆に値するものでした。いくつかの会社で、総額人件費よりも課税前利益の額の方が大きいといった実績が公表されていたのです。  

 その後インドは、ジェネリック薬品の大国だという事は、多く聞くところでしたが、恐らく今回の発表の背後には、そうした中で培った技術・ノーハウのっ蓄積が生きているのでしょう。

  報道によれば、今回接種するワクチンは、イギリスのアストラゼネカと提携する1社と、自国産ワクチンの1社という事ですが、製薬技術とIT技術が、インド流に噛み合った結果でしょうか、速さも、供給能力も、大変なものだとまさに驚嘆です。

 すでにネパールなどへの輸出も進めつつあるという事ですが、モディ首相が強調するように「世界最大のワクチン・プロジェクト」で、政府の力の入れ方の凄さが窺われます。

 先週の国会では、維新の片山氏が、ワクチン国産の重要性を指摘していましたが、現政権は当初から、国民に対しては外国産ワクチンの輸入枠確保についてしか説明していません。
 国産ワクチンの開発について、日本政府として本気で取り組もうという気概を、総理からも、担当大臣からも聞いたことはありません。

 戦後一貫して技術立国、技術大国の目指すと言ってきている日本です。しかし、数字で見れば、この10年、日本の研究開発費はほとんど伸びていません(https://blog.goo.ne.jp/tnlabo/e/4d4fd6af93bfe3f6a21a1a047aac35b1)。
 
 研究開発は一朝にして成るものではありません。不断の人間と資本への投資、長い懐妊期間が必要です。
 残念ながら日本は、その努力に後れを取ってしまったようです。しかも、政府は、それへの反省の心も持ち合わせていないように見えます。

 目先の事にかまけて、バラマキや人気取りといったポピュリズムに陥った如く見える現状の日本の政治の在り方に、日本の将来を任せて日本は何処に行くのでしょうか。

ご存知でした?アルミで水素製造

2021年01月15日 17時05分28秒 | 科学技術
ご存知でした?アルミで水素製造
 先日は、CNF(セルローズ・ナノ・ファイバー)製造の大幅コストダウンに東亜合成が成功したというニュースをご紹介しましたが、今回も未来につながる科学技術のご紹介です。

 富山県高岡市のアルハイテックという企業が、世界で初めてのアルミの廃材で水素を作るという実証実験装置作って研究を進め、この春にも水素製造装置の外販に入ろうという勢いだそうです。

 すでに地方紙でも日経新聞でも、日経産業新聞でも報道されていますから、ご承知の方も多いかと思いますが、世界で初めての装置(同社)という事ですし、アルミ(アルミの廃材)があればどこでも水素が作れるという魔法のようなお話ですので、つい取り上げたくなってしまいました。

 アルミは水と反応させれば水素を発生するという事はどこかで習った記憶がありますが、それが実用化されつつあるという事は、日本の技術開発もやっぱり凄いのかというのが実感です。

 同社はトヨタと組んでという事ですが、確かにアルミエンジンを作ればアルミの廃材は山ほど出るわけで、再利用しにくいアルミの廃材から水素という事であれば、素晴らしいことです。

 アルミが水と反応して水素を作るには、錆びていない純粋のアルミでなければいけないのだそうですが、その辺の技術は私には解りません。勿論その辺りが技術革新の心臓なのでしょうが、同社のHP などを見ますと、水素製造効率を高め、利用した後の水酸化アルミニウムは繊維製品の難燃剤の原材料として必要なものという結構なお話のようです。

 NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)のニュースにもアルハイテックの紹介がありまして、実証装置は1時間2㎏の水素を生産できるが、早晩5㎏にする、とあります。
 
 5kgというとトヨタの水素自動車ミライが700キロ走れる量だという事です。どこでも、いつでも水素が簡単に製造できるようになると、水素自動車には随分便利になるという事でしょう。

 ネットで見ますと、何か所もの高専で、「アルミで水素」の研究が盛んなようです。
 水素の時代が来ると言われていますが、かつて取り上げたこともある 燃料電池 の多様な用途の開発・普及につながる可能性は大きいのではないでしょうか。

 こうした日本の中小企業の元気さが、ここ数年の沈滞とコロナの追い打ちで低迷・混乱の日本経済・社会の、力強い支えになって呉れそうな気もするところです。

いよいよCNFの時代が来るか

2021年01月07日 20時55分55秒 | 科学技術
いよいよCNFの時代が来るか
 CNFについては、皆様既によくご承知のことと思います。かつてこのブログでも 取り上げましたが、あえてCNFとは何かを繰り返します。

 CNF、セルローズ・ナノ・ファイバーはセルローズをナノレベルまで分解したものでそれを原材料にすると重量は鉄鋼の1/5、強度は鉄鋼の5倍という素材ができ、軽量強靭な構造物から、人の肌に潤いを与える化粧品素材まで多様なものが出来るのだそうです。

セルローズとは、「植物細胞の細胞壁および植物繊維の主成分で、天然の植物質の1/3を占め、地球上で最も多く存在する炭水化物である。繊維素とも呼ばれる」(ウィキペディアより)、という事で、木質は勿論、藁やサトウキビの搾りかす、天然繊維の古着からもとれるという事です。
 原材料はいたるところにあり、鉄より優れた性能の原材料という事で将来の利用は広範囲で、先ずは自動車のバンパーやボディや、住宅の部材などという事になるのですが、製造コストが高くて、いまは化粧品に配合利用されているほか限られた範囲でしか利用されていませんが、製造コストが安くなれば、鉄鋼やカーボンファイバーにとって代って世の中を変えていくと言われます。

 そのCNFの製造コストを5分の1に下げる技術が東亜合成によって開発されたという報道が今日の日経産業に出ていました。

 それでもまだ高価だろうと思いましたが、少量のCNFを混ぜることによって、樹脂製品の強度は格段に上がり、その分、原材料の使用量は減り、強度は上がり、軽量化が可能になるとのことです。

 詳細は、日経産業その他同社のHPをご覧いただくとして、こうした技術開発が、続々出てくるようになれば、日本の産業、ひいては日本経済も、再び活況を取り戻し、長期の停滞から脱出の可能性が高まるという期待が大きくなるという事でしょう。

 再生可能エネルギー、蓄電技術、蓄電技術にもつながる水素貯蔵技術などなど、世界で見ても、日本の先行する分野は少なくないと思うのですが、日本の近年の技術開発の進捗状況は、何かもう一つ元気がないように感じられます。

 先日は、コロナワクチンの開発で日本が全く出遅れてしまったことを嘆きましたが、これについては昨日の朝日新聞が、業界の問題と政府の政策の両面からの報道をしてくれました。

 こうした日本の近年の技術革新が精彩を欠く根本的な問題は、政府の科学技術政策、研究開発推進に対する態度にどうも気合が入っていないという事にあるのではないかという点については折に触れて書いていますが、そうした中で、今日の日経産業の記事は、明るい未来を予感させるものでした。

 科学技術立国日本のパワーの開花を具現化するような、すばらしい開発のニュースが続くことを期待したいと思う所です。

日本の国債が紙屑になる条件(5)技術開発の部

2020年12月15日 23時34分40秒 | 科学技術
日本の国債が紙屑になる条件(5)技術開発の部
 表題と逆に、国債が紙屑にならないようにするための条件という事であれば、「技術開発で世界に先行」が最も確実で、その故に最も大切な条件という事が出来るように思うところです。

 勿論、私は科学技術については素人で、持っている情報はマスコミ頼りか、状況証拠からの推定といったものです。
しかし、それでもなお、最近の日本の技術開発の状況は、何か、国債を紙屑にする条件の方に入ってきているような気がしてなりません。

 正直言って、少し前までは、おそらくリーマンショック前までは、日本が技術開発、技術革新で、世界をリードすることはあっても、次第に後れを取るような状態になるといった心配はないだろうと思っていました。
 しかし、最近は何か心配になることが多いような気がしています。

 太陽光発電が騒がれ始めたころ、日本は世界をリードする勢いでした。今は違うようです。蓄電技術はどうでしょうか。これから最も需要の多い技術開発の分野ですが、材料、部品の開発も含めて、日本が優位に立つことは十分可能だと思っていますが、大丈夫でしょうか。テスラは、松下の電池購入から自社開発に動き始めたようです。

 心配が始まったのは、 研究開発投資の統計、更には人件費の中の 教育訓練費の縮小といった研究開発に直結する数字を見て、これでは中国、韓国に後れを取るのも当然かと思うようになったことです。

 国家の命運に関わるような技術開発についての失敗:日本の知恵を集めたはずの「 もんじゅ」末路は哀れなものでした。
創られた神話の崩壊:大地震の時は原発に逃げ込めば絶対安全という見学者への説明が結局は創られた神話だったという現実を知りました(小泉元総理も同じ!)。
日本が世界に誇ったディスプレイ産業の衰退:ジャパン・ディスプレイはどうなるのか、有機ELは日本の得意分野ではなかったのか。今は韓国に負けています。
更にはネットワーク社会の進展の中で、どこまで重要な位置を占めるようになるのか解らないスマホの新製品開発の遅れも見えています。
そして、今やデジタル社会化、電子マネーの世界でも、訪日中国人の活用の広がりを見て驚く日本人になっています。

鳴り物入りで走り出したマイナンバー・カードはどうでしょうか。普及は遅々として進みません。お役所はまだまだ紙とハンコ、デジタル化担当大臣の事務所の届けは紙だそうです。

余計なことも書きましたが、このブログで科学技術の流れを追ってきて 大きな転換点になっているのはリーマンショックだったのではないかと考えています。

円高とバブル崩壊のダブルのデフレで始まった平成長期不況でしたが、日本経済は2000年に底入れし、アメリカのITバブル崩壊の影響は受けましたが、2002年か2008年のリーマンショックまでは、何とかジャパンアズナンバーワンの時代への復元を目指して頑張っていたように思います。

 しかし、リーマンショックによる再度の円高$1=¥75~80では日本経済は殆ど死に体でした。2009年から2012年まで、長期不況の最後に瀕死の経済を経験した産業界、一般家計は、節約により自己防衛という殻に閉じこもる消極性の中にサバイバルを見出そうとし、積極策は破綻への道と考えるようになったように思われてなりません。

 投資をするなら海外、国内では儲かるはずがないと考える企業。少子高齢化の進捗の中で、賃金も年金も良くなることは期待できない、大事なのは貯蓄して将来に備えることと考える家計、そして、言葉ばかりが立派でも(一億総活躍、全世代型社会保障・・)、全く実感の湧く政策をとらない政府、こんな構図が出来上がってしまい、2013~14年以降の円安政策の成功の後も自虐的に成長しない経済を作ってしまっている日本になっているのではないでしょうか。

 一つ「頑張る日本」の例を挙げれば、自動車産業でしょう。例えばトヨタは、ずっと「年300万台国内生産は死守」と言い続けています。このブログでは「涙が出るほど有り難い話」と書いた記憶があります。

 国内で、世界トップのモノづくりを続ける技術開発力を維持する、これこそが日本が本来の日本らしさを取り戻す「鍵」ではないでしょうか。

 日本を本来の日本に戻す責任は結局は政府にあるのでしょう。今、 政府は学術を目の仇にしていますが、学術は研究開発の根っこです。
 その意味では学術を自分の意に従わせようと、秦の始皇帝の焚書坑儒の焼き直しをやるのは、自らの手で「国債紙屑」を招いているようのものだと考えています。

新型コロナウィルス対策に一条の光

2020年05月16日 14時05分30秒 | 科学技術
新型コロナウィルス対策に一条の光
 既にご承知の方もいらっしゃると思いますが、今日、奈良県立医科大学の矢野教授のグループが、オゾンによる新型コロナウィルスの不活性化の成果を確認したという新たな研究の結果が発表されました。

 オゾン発生器でオゾンを発生させ、ノロウィルスやインフルエンザウィルスを無害化することは知られていましたが、昨日までは新型コロナウィルスについてはオゾンの効果が確認されていないというネットの記事しかあっりませんでした。

 最近,オゾン発生器メーカーが超繁忙というニュースは見ていましたが、早速に成果が出てきたという事でしょうか。世界初という事ですが、まさに画期的、新型コロナウィルスに対する対抗手段を人類が持つことになったことを、こうした成果が日本発で出されたことを、心から歓迎したいと思います。 
 

知識と知恵の関係:新技術開発に必要な事

2020年03月23日 13時30分50秒 | 科学技術
知識と知恵の関係:新技術開発に必要な事
 キリスト教では人間は泥からつくられた(ただし女性は男の肋骨からつくられた)ことになっています。古事記では、高天原から降りてきた(ただし降りてきたのは神様)とのことで、人間は既に地上(瑞穂の国)に住んでいたことになっています。

 今では、本当にそうだと思っている人は多分いないでしょう。地球の上で、鉱物(水も鉱物)からシアノバクテリアのようなものが出来、それがホモサピエンスまで進化したという進化論の方が信じられていると思います。

 この進化の過程で知識とか知恵といったものがあったのでしょうか。
 全知全能の神、天地創造の神が、その意思をもって進化を進めたのであれば、それは全知全能という知恵と知識が前提ですが、最近の進化論では、偶然起きる突然変異が進化の源という事になっているようです。

 今回の新型コロナも突然変異の結果で人から人に感染するようになったようですが、突然変異というのは、結構頻繁に起きているようで、その中で今の地球環境にうまく適応できたものが生き残っているという結果が進化だということのようです。

 新型コロナは人間が宿主ですから、人間が死滅したら新型コロナも滅亡です。人間がいなくならずに共存することになるのか(環境適応)、人間が新型コロナウィルスを絶滅するか(環境不適応)というのがコロナウィルスが環境適応の成功するかしないかの分かれ目でしょうか。

 こんな風に考えますと、人間が知識と知恵を使って、技術開発するという事は、人間の力でいろいろな突然変異を起こし、その中で人間に役立つものが適者生存という事で社会をより豊かで快適なものにしていると言うことが出来そうです。(原発は適者と思われていましたが・・・)

 技術開発が環境適応できるかどうかは人間が(神様に代わって)判断することになっているようです。
 例えば、ノーベル賞というのは人間社会によりよく適応する突然変異(新発見や新技術)を実現させた人に贈られる賞というとでしょうか。

 確かに、ノーベル賞受賞者のお話の中で、実験中に「あ、失敗だ」と思ったようなことが、素晴らしい結果につながった、などというのが往々にしてあるようです。こんなのはまさに人の手による突然変異の発生でしょうか。

 という事になりますと、技術革新、新技術開発というのは、出来るだけ頻繁に研究開発を行うことで、その中で適者生存(人間が支配者という環境に適切に適応したものが生き残る)したものに与えられる名前という事でしょう。

 では、革新技術を活発にするのに必要なことは何かという事になりますと、「人間の手によって出来るだけ沢山の突然変異を起こすこと」で、その中に適者生存となる(人間に役立つ)ものが出来るだけ多く存在していればいいのです。

 必要なことは当然、必要な資源をつぎ込むこと、つまり「人」と「カネ」の投入です。知識の上に「知恵を出す能力」を持つ人間と、より多くの研究開発費をつぎ込むことでしょう。
 事は偶然と確率に依存することが多いのです(突然変異ですから)。裾野は広いほどいいのです。

 こうして見て来ますと、いまの日本で決定的に不足しているのは、注ぎ込まれる資金量でしょう。すでに見ましたように、この10年で研究開発費は中国4倍、韓国2倍です。 日本「よこばい」です。
 「中国や韓国など」と言っているうちに、日本はどんどん置いていかれるようで、今回のコロナ対策でも、データの収集、治験、検査キットの開発など、マスコミで見ても、日本の遅れが目立ちます。

 最後に一言付け加えれば、日本の研究開発環境が次第に劣化し(野依良治氏の指摘)その結果、研究者の意欲も沈滞しているのではないでしょうか(高度な研究には高度な資金が必要です)。人間の意欲、やる気が研究開発では重要なカギでしょう。

 政府は予算を削り、企業は自力よりM&Aに頼る今の日本はこの先・・・?
 強力な反省が必要なのではないでしょうか。

AIの進化と雇用問題:心配より巧みな対応を:1

2020年01月12日 11時03分12秒 | 科学技術
AIの進化と雇用問題:心配より巧みな対応を:1
 丁度1年ほど前、AIは人間の 脳の外付けハードディスクのようなものだと書きました。そして、人間はやりたいこと(今は出來ないが出来るようになったらやりたい事も含めて)がいくらでもあるので、人間の仕事はなくなることはないと書いています。 

 勿論、これはAIの進化で仕事を失う人が沢山出て大失業時代が来ると心配する意見が結構あるので、そういった意見に対してのものです。
 現実は、コピー機ができて清書係は要らなくなり、電卓(特に関数電卓)ができて計算係が要らなくなりましたが、失業者は増えません。

 これは、かつて「 ME化と雇用」の問題が論じられたのと基本的には同じだと考えています。
 ただ、ME化は製造現場が主ですが、AIは頭脳労働の分野になりますので、影響はより深刻になると考える方もおられるようです。

たしかに、 韓国のトップ棋士がAIには勝てないと引退したというニュースなどが象徴的に取り上げられ、将来は医者の診断や司法の分野でも人間よりAIの方が正確な判断をするのではないかなどと言われます。
 さらには手術の分野でも「ダヴィンチ」が人間より巧くやる(現状これは操作は人間で、MEの分野)などという事もあるようです。

 確かに、AI、そしてAIを組み込んだロボットの活躍は、今、人間が苦労してやっている分野の仕事をどんどん代替してくことでしょう。
 昔は関係書籍を買い集めたり、資料室や図書館に通ったり、担当官庁に問い合わせをしたりと大変だった資料集めが、AIは、現在ある情報は全部覚えていて(世界中のサーバーにアクセスできる)、その中から検索し、関連する情報を集め整理してしまうことになるでしょう。

 それを使って何をするか(立派な仕事に使うか、犯罪に使うか)は人間のやることでしょうが、資料を集めて整理する仕事はなくなる可能性大です。
 今あなたがやっている仕事は、AIやロボットが秒単位でやってしまうかもしれません。
私の仕事はAIやロボットがいくら進化しても出来ませんと自信を持って言える方は、かなり少なくなってしまう可能性は結構あるのではないでしょうか。

それではやっぱり大失業時代が来るのではないかという事になりそうだ、と言われる方もおられるかもしれません。私もそうなる可能性がないとは言えないと思っています。

 これまでも、こうした事態は避けられるのでしょうかと考えてきたのですが、結論か言えば、「社会が(人間が)、巧みに対応すれば十分避けられる」という事になるのではないでしょうか。

 このブログは、上記してあるサブタイトルのように、「人間が住む地球環境をより豊かでより快適なものにするために付加価値をどう作りどうお使うか」がテーマです。

それに従っていけば、答えに辿り着くのではないかと思っています。次回その辺りを少し具体的に考えてみたいと思っています。

原発問題論議、恐ろしいデータの欠如

2019年11月20日 22時35分17秒 | 科学技術
原発問題論議、恐ろしいデータの欠如
 日本列島もいよいよ冬景色で西高東低の気圧配置、日本海側は雪も、という気象状況に続く説明で、フィリピン沖で台風27号が発生、沖縄に接近、本州も要注意(?)などと来て、一体どうなってるのと思うと同時に、また海面温度の上昇の問題が気になりました。

 ところで、原発の問題では、使用済み核燃料の始末、汚染水の廃棄、などが問題になっていますが、冷却水を排出、つまり温排水が火力などに比べてどうなのか、聞いた事がありません。
 ただ、火力は止まっている時は温排水は出ませんが、原発は、燃料棒がある限り、休止していいも冷やし続けなければならないはずです。このあたりのデータは現実にあるのでしょうか。
 
 という事で、原発が多くなったことが、海水の表面温度にどの程度の影響を与えているか、客観的なデータが必要になって来ているような気がしています。

 勿論、さらに重要な問題は使用済み核燃料の保管や、原発から出る汚染水の処理でしょう。
 安倍さんはオリンピック招致の時、有名な「アンダーコントロール」という発言をしました。当時から「嘘はよくないよ」といっていた人も大勢いましたが。今、汚染水は日本列島から溢れ出しそうで、いよいよ海洋投棄問題になっているようです。

 ここでまた正確なデータが必要です。福島の汚染水など、フランスの再処理工場の排水の濃度に比べれば、ずっと綺麗だという説もあります。フランスと組んでいるロシアのシベリアの工場はさらに問題が多いという報道もあります。

 こうしたものについても、客観的な数字があって初めて議論が人類に役立つものになるのですが、具体的なデータ比較は簡単には手に入りません。

 さらに自然放射能との関連で、人体にどの程度の影響があるかについても信頼できるデータには巡り合っていません。
フランスの再処理工場(アレバ)の排出が、許容限度内なのか、そうでないのか、日本の汚染水海洋投棄の判断も当然影響を受けるはずですが、今、問題になっているのは風評被害の方が中心のようです。これではまともな議論にはなりません。

 かつて、原発建設の増加で アメリカ中の河川が干上がる可能性があるという論文のあった事に触れましたが、最近の異常気象を見るにつけ、原発には放射能汚染をどうするかという、いわゆる「トイレの無いマンション」論議とともに、冷却水と海水の表面温度の上昇との関係についても、客観的な調査とデータの公表が必須だと思われます。

 福島の原発事故の時には、心配する国民にすべて ガイガー計を持たせたらと書きましたが、誰もが、望めば容易に最先端のデータを入手でき、データによって判断できるという事が、内では健全な民主主義を育て、外では世界人々の納得を得るための王道ではないでしょうか。

研究開発が進まない日本、理由は?

2019年04月22日 17時35分32秒 | 科学技術
研究開発が進まない日本、理由は?
 前回、この10年、日本では研究開発費がほとんど増えていないという現実を見てきました。

それに引き換え、中国の研究開発費は、この10年間に約4倍、韓国でも2倍に増えていることがOECD の調査で示されていることも指摘しました。

 もちろん、研究開発費だけが科学技術の発展を決めるわけではありません。人間の能力如何も大きな要件です。
 ニュートンがリンゴの落ちるのを見て「万有引力の法則」を発見するのに、研究開発費は要らなかったという人もいます(冗談です)。

 しかし現在のエネルギー開発やエレクトロニクス・通信技術の研究開発には巨大な研究開発投資が必要なことは周知の事実です。
 企業経営もそうですが、あらゆる人間生活にかかわる進歩は「人間が資本を使って行う」活動によって起こるので、その際人間が活用する「資本(モノ・カネ)」はますます「高度化」、「高価化」しているのが現実です。

 ですから、日本の研究開発投資が増えないということが、日本の研究開発の遅れにつながるということはある意味では当然でしょう。

 ではなぜ日本の研究開発費は増えないのでしょうか。
 日本の科学技術関係の国家予算の対GDP比がこのところ低下傾向といった点も指摘されますが、国の政策の在り方が、このところ顕著にポピュリズムに堕し、当面の人気取り政策に偏るといったことも背後にある見逃せないことのように思われます。

しかし研究開発費の主な支出主体は企業と大学、研究機関で、その内企業の支出が7割以上ですから主要な問題は企業にあるのかもしれません。
 この点を考えますと「日本経済の先行き不透明」という問題がありそうです。アベノミクスは行き詰まっている様相ですが、政府は、少子高齢化の不安を煽りながらアベノミクスの成果を強調するばかりで、科学技術の発展が日本経済を救うといった「長期的視点の政策」は聞いたことがありません。

 いずれにしても、科学技術の振興は、その成果が今日・明日に出てくるものではないでしょう。「モノづくり」を言いますが、「モノ」の中身はますます高度な科学技術に支えられているのです。

 ポピュリズムに汚染され、長期的視点を失った国家政策の下では、企業も安心して 長期的視点の技術開発に腰を入れて取り組むといった気概はなかなか出にくいのかもしれないなどと思ってしまうところです。

 原発の再稼働に異常に執着することにも象徴的にみられますが、「当面のコストが安い」(将来までのコスト計算はできていない)エネルギー源を追い続けて、本当のエネルギー基盤の確立は出来るのでしょうか。

 こうした政府の政策の在り方が、民間企業の行動様式にも影響を与えているといったことはないのでしょうか。
 この点についても、研究開発については、企業行動の面からの検討が必要なように思うところです。
 次回、最近の企業行動について見てみたいと思います。