月刊登記情報2009年1月号から、「実務家による商業・法人登記Q&A(1)」と題した連載がスタートしている。で、「補欠の意味」と題する小稿があるのだが・・・。
同稿では、「定款に監査役の員数は2名以内とする規定があり、また補欠監査役の任期短縮規定がある場合に、2名の監査役のうちの1名が任期途中で辞任し、後任者を選任したときに、当該後任監査役に定款の任期短縮規定が適用されるか」という問題を設定し、当該監査役は、補欠に該当し、前任者の任期を引き継ぐことができる旨が述べられている。
ん~、どうであろうか。
任期を揃えたいというニーズは、もちろんわからないでもないが、本来的には、監査役の地位の安定及び独立性保持の観点から、監査役については、法定任期が保障されており、例外的に、補欠として選任された監査役の任期についてのみ、定款の定めにより前任者の任期を承継する形で短縮することができるものである。したがって、任期の短縮可能な場合については、きわめて限定的に解釈されるべきものである。
会社法施行時に、「補欠」概念の整理がなされ、若干の変容があったものの、明確になったように思われる。1名又は複数の監査役全員が任期途中で退任した場合の後任者は、法的には当然「補欠」であるから、任期短縮規定を及ぼすことは認められ得る。しかし、上記設例のケースでは、欠員が生じていない以上、法的には「補欠」に該当しないので、任期短縮規定を適用させることはできないと考えざるを得ない。
仮に、設例のケースで、補欠としての選任を認めるとした場合、退任後1か月後の後任者の選任であれば特に問題はなかろうが、6か月後の選任の場合の可否、1年後の選任の場合の可否という、補欠として認められる場合と認められない場合の境界線が明確ではない。また、とりあえず前任者の退任の登記を了した後に、暫くあってから、後任者の就任の登記をするような場合に、補欠と扱うことの可否も問題となろう。
監査役の地位の安定及び独立性保持の観点からすれば、株式会社の恣意が入る余地がないことが望まれる。明確に「補欠」の要件に該当する場合にのみ、定款の規定によって、任期が当然に「前任者の任期の残存期間」となるのでなければならない。したがって、要件に該当する場合に、「前任者の任期の残存期間」又は「通常の任期」を株式会社が選択する余地があることも本来は妥当でないであろうが、「前任者の任期の残存期間」が原則であり、「通常の任期」に伸長することが可能であると解すれば是認され得る。
上記小稿は、補欠概念を拡張し、単なる後任者の選任の場合も含まれるとすることによって、設例のケースで、任期短縮規定の適用を認めようとするものであるが、原則である「通常の任期」に加えて、株式会社の判断によって選択的に任期を「前任者の任期の残存期間」に短縮することを認めようとするものであるから、妥当ではないであろう。
ちなみに、松井信憲著「商業登記ハンドブック」(商事法務)432頁では、上記のケースでは、「これを補欠監査役とみることはできず、任期を法定の期間より短縮することはできない」と明確に解説されている(上記小稿では、ハンドブックの引用はあるものの、この点には触れられていない。)。
同稿では、「定款に監査役の員数は2名以内とする規定があり、また補欠監査役の任期短縮規定がある場合に、2名の監査役のうちの1名が任期途中で辞任し、後任者を選任したときに、当該後任監査役に定款の任期短縮規定が適用されるか」という問題を設定し、当該監査役は、補欠に該当し、前任者の任期を引き継ぐことができる旨が述べられている。
ん~、どうであろうか。
任期を揃えたいというニーズは、もちろんわからないでもないが、本来的には、監査役の地位の安定及び独立性保持の観点から、監査役については、法定任期が保障されており、例外的に、補欠として選任された監査役の任期についてのみ、定款の定めにより前任者の任期を承継する形で短縮することができるものである。したがって、任期の短縮可能な場合については、きわめて限定的に解釈されるべきものである。
会社法施行時に、「補欠」概念の整理がなされ、若干の変容があったものの、明確になったように思われる。1名又は複数の監査役全員が任期途中で退任した場合の後任者は、法的には当然「補欠」であるから、任期短縮規定を及ぼすことは認められ得る。しかし、上記設例のケースでは、欠員が生じていない以上、法的には「補欠」に該当しないので、任期短縮規定を適用させることはできないと考えざるを得ない。
仮に、設例のケースで、補欠としての選任を認めるとした場合、退任後1か月後の後任者の選任であれば特に問題はなかろうが、6か月後の選任の場合の可否、1年後の選任の場合の可否という、補欠として認められる場合と認められない場合の境界線が明確ではない。また、とりあえず前任者の退任の登記を了した後に、暫くあってから、後任者の就任の登記をするような場合に、補欠と扱うことの可否も問題となろう。
監査役の地位の安定及び独立性保持の観点からすれば、株式会社の恣意が入る余地がないことが望まれる。明確に「補欠」の要件に該当する場合にのみ、定款の規定によって、任期が当然に「前任者の任期の残存期間」となるのでなければならない。したがって、要件に該当する場合に、「前任者の任期の残存期間」又は「通常の任期」を株式会社が選択する余地があることも本来は妥当でないであろうが、「前任者の任期の残存期間」が原則であり、「通常の任期」に伸長することが可能であると解すれば是認され得る。
上記小稿は、補欠概念を拡張し、単なる後任者の選任の場合も含まれるとすることによって、設例のケースで、任期短縮規定の適用を認めようとするものであるが、原則である「通常の任期」に加えて、株式会社の判断によって選択的に任期を「前任者の任期の残存期間」に短縮することを認めようとするものであるから、妥当ではないであろう。
ちなみに、松井信憲著「商業登記ハンドブック」(商事法務)432頁では、上記のケースでは、「これを補欠監査役とみることはできず、任期を法定の期間より短縮することはできない」と明確に解説されている(上記小稿では、ハンドブックの引用はあるものの、この点には触れられていない。)。
逆に全員が退任すれば、補欠に該当しません。
ハンドブック432頁については十分にふれています。同じ内容を原稿の末尾に書いておきました。
ハンドブックは、勘違いされやすい内容ですが、千問の305頁を根拠にしており、そのQ422には右上に「329条2項関係」とあります。336条の補欠のことではありません。
これに気づくのに、時間がかかりました。
共犯(?)の鈴木です。
私も当初勘違いしていたのですが、329条2項でいう「補欠」と336条3項でいう「補欠」は別の意味であると思います。
また、これまで及び現状の実務を勘案すると、登記情報における見解が相当であると考えますが、どうでしょう?
定款の任期の規定は
「任期満了前に退任した取締役の補欠として選任された取締役任期は前任者の任期の残存期間と同一つする。」となっております。
新たな役員選任時の株主総会議事録には
「後任の取締役選任」と記載されています。
この場合、やはり任期は前任者の任期の残存期間と同一となってしまうのでしょうか?
色々調べていると、定款に「前任者の任期を承継する」の記載が無いと、新たに任期就任時から起算すれば良いとの見解もあるようです。
前任者の残存期間と同一となるのであれば、就任して3ヶ月で任期満了となるため、新たに起算とするとの見解の方が有り難いのですが...
ご指導よろしくお願い致します。
定款の任期の規定は
「任期満了前に退任した取締役の補欠として選任された取締役任期は前任者の任期の残存期間と同一つする。」となっております。
新たな役員選任時の株主総会議事録には
「後任の取締役選任」と記載されています。
この場合、やはり任期は前任者の任期の残存期間と同一となってしまうのでしょうか?
色々調べていると、定款に「前任者の任期を承継する」の記載が無いと、新たに任期就任時から起算すれば良いとの見解もあるようです。
前任者の残存期間と同一となるのであれば、就任して3ヶ月で任期満了となるため、新たに起算とするとの見解の方が有り難いのですが...
ご指導よろしくお願い致します。