司法書士内藤卓のLEAGALBLOG

会社法及び商業登記に関する話題を中心に,消費者問題,司法書士,京都に関する話題等々を取り上げています。

剰余金の処分(その他資本剰余金のその他利益剰余金への振替)の無効

2021-07-26 08:31:10 | 会社法(改正商法等)
弁護士川井信之の企業法務(ビジネス・ロー)ノート
http://blog.livedoor.jp/kawailawjapan/archives/9860580.html

 最近,剰余金の処分(その他資本剰余金のその他利益剰余金への振替)の決議をする株式会社が多いと思われるが,これは,会社法第452条に基づく会計処理である。

会社法
第452条 株式会社は、株主総会の決議によって、損失の処理、任意積立金の積立てその他の剰余金の処分(前目に定めるもの及び剰余金の配当その他株式会社の財産を処分するものを除く。)をすることができる。この場合においては、当該剰余金の処分の額その他の法務省令で定める事項を定めなければならない。


 この場合,振替をすることができる額は,会社計算規則第27条第2項第3号の解釈として,利益剰余金(利益準備金+その他利益剰余金)のマイナス額の填補の範囲内に限られている。

会社計算規則
 (その他資本剰余金の額)
第27条 【略】
2 株式会社のその他資本剰余金の額は、前三款並びに第四節及び第五節の二に定めるところのほか、次の各号に掲げる場合に限り、当該各号に定める額が減少するものとする。
 一 法第四百五十条の規定により剰余金の額を減少する場合 同条第一項第一号の額(その他資本剰余金に係る額に限る。)に相当する額
 二 法第四百五十一条の規定により剰余金の額を減少する場合 同条第一項第一号の額(その他資本剰余金に係る額に限る。)に相当する額
 三 前二号に掲げるもののほか、その他資本剰余金の額を減少すべき場合 その他資本剰余金の額を減少する額として適切な額
3 【略】

 また,上記マイナス額は,確定した決算に基づく数字による必要がある。


 上記の事例(株式会社タカキュー)では,利益剰余金(利益準備金+その他利益剰余金)のマイナス額を超えて,その他資本剰余金の振替の決議がされたことから,決議が無効であるとして,振替処理は効力は生じないと報じたものである。

 その他利益剰余金のマイナスを埋めることができるとの誤解があったということのようである。

 上記は,比較的常識の部類に属すると思われる。剰余金の処分に関する議案がある場合は,要チェック事項であるので,司法書士としても心得ておくべきであろう。

 しかし,全体を無効としなくても,適正な補填の範囲内では有効と解して,会計処理を行っても支障はないとも思われるのであるが・・・。
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5 コメント

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Unknown (会社法務マン)
2021-07-27 22:35:13
先生のブログで勉強させてもらってます。
欠損てん補のため、その他資本剰余金をその他利益剰余金に振替するのですが、手元にある本では利益準備金がある場合は先行して取り崩さないといけないとありますが、その必要はあるのでしょうか。ご教示いただければ幸いです。
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御回答 (内藤卓)
2021-07-28 08:23:24
なるほど。理のあることだと思います。しかし,一般論としては,利益準備金をそのままに,損失処理をすることがあるかというと,そういうことはなさそうですね。タカキューのケースは,不思議です。ちなみに,御指摘の書籍は,何でしょうか。
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Unknown (会社法務マン)
2021-07-28 13:50:04
内藤先生、早速にご回答ありがとうございます。
「会社法務書式集第2版」のP234の図表5-4に記載があり、根拠がわからず悩んでおりました。
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御回答 (内藤卓)
2021-07-28 18:01:32
金子本ですね。確かに,そういう記載がありますね(私は,初版しか持っていませんが。)。

 おそらく,出所は,郡谷大輔・今泉勇「定時株主総会における欠損填補と損失処理の違いと利益準備金処理 (会社法・金商法の実務質疑応答(19))」(旬刊商事法務1862号139頁以下であろうと思います。

 本来,「損失処理」の目的は,その他利益剰余金のマイナスの一掃ですが,利益準備金がそのままであれば,その他利益剰余金に同額のマイナスが残ってしまうため,「目的を達成することができない」として,「利益準備金を減少させておく必要がある」という記述があります。
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Unknown (会社法務マン)
2021-07-28 18:09:54
ありがとうございます!
会社法や計算規則を見ても根拠がわからず悶々としておりました。
これからも先生のブログを楽しみにしております!
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