司法書士内藤卓のLEAGALBLOG

会社法及び商業登記に関する話題を中心に,消費者問題,司法書士,京都に関する話題等々を取り上げています。

租税特別措置法第84条の2の3第2項の適用の考え方

2024-03-28 06:33:39 | 不動産登記法その他
 一部につき第1項の適用がある場合においても,「課税標準たる不動産の価額」は影響を受けず,「160万円」であるというのがポイントである。

 理に適った考え方であるが,どうやら「登記研究901号」の質疑応答で,「第2項の適用がある」とするものがあったということで,今回の事務連絡に至ったようである。

cf. 「登記研究901号」の質疑応答に関する参考
https://ebina-asuhare.com/20230425-sozeitokubetusotihou/


○ 租税特別措置法第84条の2の3第2項の適用の考え方について(令和6年3月19日付け法務省民事局民事第二課赤間補佐官事務連絡)

 租税特別措置法(昭和32年法律第26号。以下「租特法」という。)第84条の2の3第2項では「登記に係る登録免許税法第10条第1項の課税標準たる不動産の価額が100万円以下」であるときは、相続による所有権の移転の登記を受ける場合の登録免許税を課さないと規定されているところ、先般、一部の法務局から、下記1の事例において同項の適用を受けられるのかとの問合せがありました。
 これについては、下記2のとおりと考えられますので、御留意願います。


1 被相続人Xが所有権登記名義人となっている固定資産税評価額が160万円の土地について、Xの死亡後に死亡したAと存命のBが法定相続分(2分の1)により相続登記をする。この場合の登録免許税について租特法第84条の2の3第2項が適用されるか。

2 登録免許税法(昭和42年法律第35号)第10条第1項では「不動産の登記の場合における課税標準たる不動産の価額は、当該登記の時における不動産の価額による」と規定されているところ、ここでいう登記の時における不動産の価額とは、相続登記の申請時における不動産の固定資産税評価額であり、上記1の事例においては160万円が不動産の価額となります。また、この場合の登録免許税額は、160万円に税率千分の四を乗じた額(6,400円)となります。

 上記1の事例においては亡Aと存命のBとの法定相続分による相続登記であるところ、亡Aについては、租特法第84条の2の3第1項の「当該個人(死者)を当該土地の所有権の登記名義人とするために受ける登記」に該当するため、登録免許税は課されないこととなります。そのため、上記の登録免許税額から亡Aが所有権の移転を受ける持分に相当する部分(2分の1部分)に係る登録免許税額を控除した額(3,200円)が、上記1の事例においてBが納付すべき登録免許税額となります。

 この場合において、存命のBが納付すべき登録免許税については、課税標準たる不動産の価額が80万円となるので、租特法第84条の2の3第2項の適用を受けられるのではないか、との問合せをいただいたところですが、上記のとおり、租特法第84条の2の3第1項の適用によって、亡Aが所有権の移転を受ける持分に相当する部分に係る登録免許税額が控除されるのみであり、登記の対象となる不動産の課税標準に影響を及ぼすものではなく、上記1の事例については措特法第84条の2の3第2項は適用されません。

 なお、「共有持分の相続に係る所有権の移転の登記の場合における租特法第84条の2の3第2項の適用の可否の判断をするに当たっての不動産の価額は、登録免許税法第10条第2項の持分の割合を乗じて計算した額とするのが相当」とした平成31年の質疑応答(登記研究851号139頁)がありますが、当該質疑応答は被相続人が共有持分を有する場合の事例であり、上記1の事例とは趣旨が異なるものですので、申し添えます。
コメント    この記事についてブログを書く
« 改正犯収法と不動産登記 | トップ | 「改正不動産登記法(令和6... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

不動産登記法その他」カテゴリの最新記事