一般社団法人が吸収合併をする場合には,存続法人にあっては法第252条第2項の規定により,消滅法人にあっては法第248条第2項の規定により,債権者保護手続として官報で公告をしなければならない。
この場合,株式会社の場合と同様に,法務省令で定める事項(決算公告にアクセスするための情報)を掲載する必要がある。
そして,定款で定める公告方法が「主たる事務所の公衆の見やすい場所に掲示する方法」(規則第88条第1項)である一般社団法人においては,存続法人にあっては規則第82条第1項第1号かっこ書の規定により,消滅法人にあっては規則第76条第1項第1号かっこ書の規定により,いずれも各項第5号が適用され,合併公告の内容として「最終事業年度に係る貸借対照表の要旨の内容」を掲載する必要がある。
ところが,これを誤って,合併公告の内容として,「主たる事務所に備え置いている」旨を記載している事例が2例ほど見受けられるようだ(平成28年8月1日と平成28年9月28日)。
御注意を。
ちなみに,一般社団法人が「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」上,公告をする必要があるのは,わずかであり,次の場合である。
1.決算公告(法第128条第1項)
2.解散(法第233条第1項)
3.合併における債権者保護手続等(法第248条第2項等)
(貸借対照表等の公告)
第128条 一般社団法人は、法務省令で定めるところにより、定時社員総会の終結後遅滞なく、貸借対照表(大規模一般社団法人にあっては、貸借対照表及び損益計算書)を公告しなければならない。
2・3 【略】
(債権者に対する公告等)
第233条 清算法人は、第206条各号に掲げる場合に該当することとなった後、遅滞なく、当該清算法人の債権者に対し、一定の期間内にその債権を申し出るべき旨を官報に公告し、かつ、知れている債権者には、各別にこれを催告しなければならない。ただし、当該期間は、二箇月を下ることができない。
2 【略】
(債権者の異議)
第248条 【略】
2 吸収合併消滅法人は、次に掲げる事項を官報に公告し、かつ、知れている債権者には、各別にこれを催告しなければならない。ただし、第四号の期間は、一箇月を下ることができない。
一・二 【略】
三 吸収合併消滅法人及び吸収合併存続法人の計算書類(第123条第2項(第199条において準用する場合を含む。)に規定する計算書類をいう。以下同じ。)に関する事項として法務省令で定めるもの
四 【略】
3~5 【略】
(吸収合併の効力発生日の変更)
第249条 【略】
2 前項の場合には、吸収合併消滅法人は、変更前の効力発生日(変更後の効力発生日が変更前の効力発生日前の日である場合にあっては、当該変更後の効力発生日)の前日までに、変更後の効力発生日を公告しなければならない。
3 【略】
規則
(計算書類に関する事項)
第76条 法第二百四十八条第二項第三号 に規定する法務省令で定めるものは、同項 の規定による公告の日又は同項 の規定による催告の日のいずれか早い日における次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定めるものとする。
一 最終事業年度に係る貸借対照表又はその要旨につき公告対象法人(法第二百四十八条第二項第三号の一 般社団法人等をいう。以下この条において同じ。)が法第百二十八条第一項 又は第二項 (これらの規定を法第百九十九条 において準用する場合を含む。)の規定により公告をしている場合(法第三百三十一条第一項第四号 に掲げる方法により公告をしている場合を除く。) 次に掲げるもの
イ~ハ 【略】
二~四 【略】
五 前各号に掲げる場合以外の場合 最終事業年度に係る貸借対照表の要旨の内容
2 【略】
第88条 法第331条第1項第4号 に規定する措置として法務省令で定める方法は、当該一般社団法人等の主たる事務所の公衆の見やすい場所に掲示する方法とする。
2 【略】