司法書士内藤卓のLEAGALBLOG

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条件付委任状の可否~「平成26年商業・法人登記実務における諸問題(1)」

2015-07-04 13:25:15 | 会社法(改正商法等)
 民事月報平成27年5月号に,櫻庭倫「平成26年商業・法人登記実務における諸問題」が掲載されている。櫻庭氏は,前法務省民事局商事課補佐官である。

 まずは,いわゆる「条件付委任状」について,

「委任状に記載された登記原因の内容等からみて,委任状作成時に委任の内容となる登記原因が既に確定していると判断できる場合には,委任状の作成時期が登記原因となる事実の発生前であっても,当該委任状によって適法な代理権の授与があったと判断することができると解される」

「委任から登記申請までの期間が比較的短く,委任の内容としても,効力発生日(※吸収合併の場合等)という時間の経過や本店移転という具体的事実を待つばかりで,それ以外の登記原因の内容については既に確定している登記申請の委任については,当該会社の意思決定の内容である登記原因が具体的に記載された委任状の添付があった場合には,その作成時期(委任状の日付)が登記原因の発生前であっても,これを受理して差し支えない」

と解説されている。

 設例としては,吸収合併の効力発生日を平成27年4月1日とする変更の登記の申請に関して,未だ登記原因が発生していない同年3月23日付けの委任状に,「同年4月1日に吸収合併することを条件に吸収合併による変更の登記申請の代理権を授与する」旨の記載があれば,当該登記の申請を受理することができる,また,平成27年2月2日の取締役会決議により同年3月1日に本店移転する旨の決議がされたところ,未だ登記原因が発生していない同年2月23日において,「同年3月1日に本店移転することを条件に本店移転の登記申請の代理権を授与する」委任状を作成し,これを代理人となる者に交付したというケースで,当該登記の申請を受理することができる,というものである。

 委任状の内容としては,単に「吸収合併による変更の登記の申請」や「本店移転による変更の登記の申請」では足りず,「同年4月1日に吸収合併することを条件に吸収合併による変更の登記申請の代理権を授与する」や「同年3月1日に本店移転することを条件に本店移転の登記申請の代理権を授与する」のように明確な記載が必要であると解されているようである。

 なお,「委任状に記載された登記原因の内容等からみて,委任状作成時に委任の内容となる登記原因が既に確定していると判断できる場合」であることから,吸収合併のケースで言えば,3月23日の時点で債権者保護手続が終了していないのであれば,不可と解すべきであろう。

 本件については,下記も是非御覧ください。

cf. 平成26年12月28日付け「条件付委任状の可否」
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