司法書士内藤卓のLEAGALBLOG

会社法及び商業登記に関する話題を中心に,消費者問題,司法書士,京都に関する話題等々を取り上げています。

取締役の就任の「時点」

2013-02-24 06:00:01 | 会社法(改正商法等)
 株主総会議事録や就任承諾書において,取締役等の就任の「時点」が明確でないものが少なくないようである。

 株主総会において取締役選任議案が承認可決された場合に,いつから取締役に就任するかというと,次のパターンがある。

1 事前に承諾をしていた場合(出席の有無を問わない。)
(1)選任の時
(2)当該株主総会の終結の時
(3)株主総会が定めた将来の日時

2 株主総会に出席して,その場で承諾した場合
(1)即時就任を承諾した時
(2)当該株主総会の終結の時
(3)株主総会が定めた将来の日時

3 株主総会の終結後に承諾した場合
(1)株主総会の終結後に即時就任を承諾した時
(2)株主総会が定めた将来の日時(当該時を経過後に承諾した場合は,(1))

 1(1)及び2(1)の場合,株主総会の最中に取締役の就任の効力が生ずるので,被選任者が当該株主総会に出席しているときは,「出席した取締役」となる。したがって,株主総会議事録においては,「被選任者が出席している旨」「席上即時就任の承諾があった旨」「出席した取締役である旨」が明らかでなければならない。

 上記以外の場合には,株主総会に「出席した取締役」とはならないので,株主総会議事録又は就任承諾書のいずれかにおいて,就任の「時点」が明確となっていれば足りる。ただし,2(2)又は2(3)の場合であって,就任承諾書について株主総会議事録の記載を援用するときは,「被選任者が出席している旨」「席上就任の承諾があった旨」も明らかでなければならない。

 しかし,株主総会議事録の記載からは,株主総会に出席しているか否かが明確でなかったり,就任の時点が明確でなかったり,ということがまま見受けられるようで,「出席した取締役」に該当するか否かが問題となってしまうようである。

 確かに,登記記録には「就任の日」が記録されるのみで,「時点」は不明であるが,株式会社と取締役との委任関係がいつ生じたかによって,ある時点において取締役の権利義務が生じているか否かという重要な区別が生じるわけであるから,株主総会議事録や就任承諾書を作成する際には,もっと「時点」が明確になるように意識すべきである。

 子供の遊びではないが,「何時何分何秒?」を意識すべきなのである。

 とは言え,難しいことではない。上記の場合分けを意識して,「即時」「株主総会の終結の時から」「平成○年○月○日から」を明確に記載したらよいだけなのである。

 なお,任期満了による改選時に,増員により新たに取締役に選任される者の就任の時点については,通常の認識では「株主総会の終結の時から」であるが,株主総会議事録の記載から「即時」と読み取り得る場合には,「出席した取締役」に該当するのではないかという混乱も生じてしまうので,やはり「株主総会の終結の時から」を明確にすべきである。
コメント